上 下
35 / 116
3…胸を張る

33

しおりを挟む

 規定違反の派手な金髪。

 カラー見本は無いからどこからがアウトとは決まってないが、彼女は明らかに脱色している。

 上場企業の本社勤務だからカジュアルフォーマルでもそれなりの身嗜みをと常々言われているのだが、エリナは守らない。

 せめてキッチリ結っていれば良いのに、下ろして巻いて盛ってとパリピが過ぎる。

 見た目が業務に関わることじゃなしと寛容になってきた世の中だが、彼女はデスクで化粧するわヘアアイロン使うわ髪の毛落としっぱなしだわで素行も良くない。

 それを注意しても「社内規定にデスクでコテ使っちゃダメって書いてませんけど」と反論されてお終いだろう。

 マナーとかモラルみたいなものがとにかく欠落しているから、真面目に話すのが阿呆らしい。


 しかし、矢向くんに関しては譲れない。

 私を好いてくれている矢向くんを、彼女の生け贄にするなんて出来ない。

 私は一旦息を落ち着けて、エリナに向き直った。

茨田まつだちゃん、私は…矢向くんのことが好き。矢向くんにアプローチ掛けるのは自由だけど、私が彼のことを好きな気持ちは捨てられないから」

「ふぅん…やっぱり、元宮さんが付きまとってたんだ。なら、エリナが告って矢向さんを救ってあげちゃお♡オバさんにストーカーされるより、可愛いエリナと付き合った方が良いもんね、元宮さんなら楽勝~」

「(私、めっちゃ惨めなオババ扱いされてる…)」


 私がストーカーだとしたら、誰と付き合おうが地の果てまで追ってやるけどな。

 恐い考えはさておいて、私の気持ちを明かしたことで私は自分のポリシーを曲げずに済んだ。

 嘘は言っていない、私が矢向くんのことを好きなのは事実だ。

 そして好きな人を明かすという弱みを握って、エリナは私より上位に立ったと思い込んでいる。

 勝手に踊ってくれてれば害は無いかな、だって私には恋人・矢向くんという大きなアドバンテージがあるのだし。


「さーて、バス戻ろうっと。元宮さんも、急いだ方が良いですよ。メイク直したってエリナみたいに若く可愛くなる訳じゃないんだしぃ」

「あっはっは…ご忠告ありがとう」

 5つ年下というだけで、ここまでマウントを取られるとは。

 跳ねて出て行く後ろ姿をこっそり睨み、化粧は直さずトイレを出る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

フラれた女

詩織
恋愛
別の部のしかもモテまくりの男に告白を… 勿論相手にされず…

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

可愛い女性の作られ方

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
風邪をひいて倒れた日。 起きたらなぜか、七つ年下の部下が家に。 なんだかわからないまま看病され。 「優里。 おやすみなさい」 額に落ちた唇。 いったいどういうコトデスカー!? 篠崎優里  32歳 独身 3人編成の小さな班の班長さん 周囲から中身がおっさん、といわれる人 自分も女を捨てている × 加久田貴尋 25歳 篠崎さんの部下 有能 仕事、できる もしかして、ハンター……? 7つも年下のハンターに狙われ、どうなる!? ****** 2014年に書いた作品を都合により、ほとんど手をつけずにアップしたものになります。 いろいろあれな部分も多いですが、目をつぶっていただけると嬉しいです。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

『番外編』イケメン彼氏は警察官!初めてのお酒に私の記憶はどこに!?

すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の身は持たない!?の番外編です。 ある日、美都の元に届いた『同窓会』のご案内。もう目が治ってる美都は参加することに決めた。 要「これ・・・酒が出ると思うけど飲むなよ?」 そう要に言われてたけど、渡されたグラスに口をつける美都。それが『酒』だと気づいたころにはもうだいぶ廻っていて・・・。 要「今日はやたら素直だな・・・。」 美都「早くっ・・入れて欲しいっ・・!あぁっ・・!」 いつもとは違う、乱れた夜に・・・・・。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんら関係ありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...