胸に手を置かれたら、朋也くんのことしか考えられないじゃん。ー無気力系後輩がグイグイ来るのは想定外でしたー

茜琉ぴーたん

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1…胸に手を置く

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「……あれぇ?」

「大丈夫っすか」

家の住所は莉子りこが伝えたらしく、矢向やこうくんは私のバッグから家の鍵を探して私を運び込みお茶を用意してくれていた。

 家主である私はベッドに転がされて尚むにゃむにゃと何かを論じていたそうで…枕はよだれでしっとりだし髪も崩れているしでもう良いところが無い。

 まだクラクラする頭で考えに考えても自分の行動が理解できず、独りになりたいがこれ以上恥を重ねたくないから矢向くんへお礼くらいはしたかった。


「ごべん…あの、お見苦しい姿を…」

「良いっすよ。元宮もとみやさんの素が見れて楽しかったっす」

「お恥ずかしい…」

「…あんま、気にすることないっすよ、マジで。胸の大きさなんて」

「忘れておくれよ…おえぇ…」

 恥の上塗りは避けたいものだ、締め付けているブラジャーを外そうと思えば不自然に胸の下にたわみができている。

 はてそういえばそこまで息苦しくもないぞ、私は恐る恐る自身の出立いでたちを確認した。


 ワイシャツのボタンは第3まで開けられて、裾はスラックスから出てだらしなく垂れている。

 そのスラックスのボタンも外れてカラカラ鳴るような状態…セットしていた髪が崩れているのはまぁ分かるとして、ここまで着崩れているのは明らかに人の手が入っての所業だ。

「……あの、これ、」

「すんません、吐くといけないんで緩めました。色々と」

「……あ、りがとう…」

「最低限しか触ってないんで安心して下さい…と言っても信用されないと思うんで、ここに来てからの様子はこれで中継してます」

矢向くんは胸ポケットに差したスマートフォンを取り出して、画面を見せてくれた。

 ビデオ通話になった画面には同僚の莉子の名前、矢向くんは

「ジブン、変なことはしてないっすよね、」

と聞いているだろう莉子へ声を投げる。

『うん、美紀みのりちゃん、きちんと家に着いたみたいだね、良かったね、矢向くんに感謝しなよー。服とか緩めるよう指示したのは私だから怒らないであげてね』

「莉子、何で矢向くんに送らせたの?」

『え、だってケンカがヒートアップして倒れちゃったんでしょ?思う存分続きをやんなさいな。じゃねー』

「違うけど……あ、切れた…」

 画面には通話時間がしっかり表示されており、店で倒れてから現在までの時間と差異はほぼ無いように思えた。

 つまりは伏した私を担ぐか何かして車に乗せて、ここで介抱するまで隙無く莉子は監視していてくれたらしい。

 だったら莉子が送ってくれたら良いのに、と思ったが向こうにも都合があるのだろう。
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