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おまけ
潤ちゃんは母になりたい・中編
しおりを挟む妻は外で働いて、家事はボクがほとんどを担う。
それがボクら清里家のルールだ。
ボクも働いているけど、時間に融通が効くから平日の学校行事や保育園のお迎えは任せてもらっている。
妻はこんなに悲観するけれど、多様性への理解を求める時代なんだから表立って批判する人なんていやしない。
「ジュンちゃん、得意な人がすれば良いんだって。女の子だからって家事をしなくても良いんだよ」
「でも、でもぉ」
「世の中のパパさんが料理下手でも何も言われないのに理不尽だとは思うけどね、女の子ってだけで家事万能だと思われるのは」
「ゔぅ…アスカは仕事もして家事もして…ごめんだけど、でも下手なんだもん…」
丸まったまま嗚咽を漏らす妻の背中を、保育園児の息子が指でツンツンと突く。
娘はよく分からない罪悪感で、泣きそうになっていた。
「ジュンちゃん、その辺にしときな。綾ちゃんが不安がってる」
「え、あ、ごめん!よく書けてるよ、字もキレイに揃ってる。でもその、お母さん、ちょっと恥ずかしかったかな…今度は、お母さんの素敵だと思うことを書いて…ね?」
娘は持ち直して「うん!」と応え、先に風呂場へと向かう。
「アスカ、変なこと指示して書かせたんじゃないよね?」
妻はジト目でボクを睨み、夕飯に手を付ける。
ボクは内心ヒヤッとしたが、
「ボクは書き方を教えただけ。内容は綾ちゃんのオリジナルだよ」
と切り抜けた。
実際そうだから仕方ない。
娘にとって触れ合う時間が多いのは必然的にボクで、でも幼い彼女も社会的な「母親」の役割を理解している。
子供から第一優先にされる絶対的な存在、何かあればまず相談する家庭のリーダー。
だから娘は冒頭に母について言及したのだし、ボクより優先させたつもりなのだ。
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