113 / 113
おまけ
潤ちゃんは母になりたい・後編
しおりを挟むただ、家庭内における妻の仕事について、娘は繕いきれなかった。
外で働く姿を見てないから、「母親」っぽいトピックを放り出すも悪口みたいになってしまったのだ。
一家の大黒柱、でも子育ての手が離れたらボクもフルパワーで働けるから収入は妻のそれを越える。
そうしたら妻はやり甲斐を失くすかもしれない…その頃には娘も息子も妻の必要性を理解してくれているか。
ボクも風呂に行こうと息子の背中を押していると、妻はカチャカチャと箸の動きを早めた。
「…ジュンちゃん、そんなに焦って食べなくても」
「ううん、私も綾とお風呂したいもん」
妻はガツガツとご飯を掻き込んで、お茶で流し込む。
「喉に詰まるよ、」
「いつも寝かしつけばっかりだから。私も綾とお話しいっぱいしたい」
「充分してると思うけど」
「休みはね。でも、これからもっと、女同士だからこそみたいな、できる話もあるだろうし……私も、お母さんともっと話したかったから」
妻のお母さまは、亡くなってもう10年以上経つ。
ボクが出会う前には既に故人だった。
妻も目指す母親像があるんだな、改めて知る情報にふむと立ち止まる。
ボクがアドバイスしなくてもちゃんと母なんだよなぁ、
「なら、2人きりで入っておいで」
ボクは息子の手を引いてソファーへ戻った。
「そう?良いの?」
「母娘の時間、しっかり取りなよ。良いとこアピールしなきゃ」
「ふふっ…ありがと♡」
妻は膝丈ストッキングを脱ぎながら、風呂場へと向かう。
「お行儀悪いよ」
「ごめーん!」
トタトタと足音が遠くなり、浴室のドアが開く音と娘の「おかーさん!きゃー!」の声が響いて来た。
「……お母さん、頑張ってるね」
ボクは息子を膝に乗せてゆらゆら揺れて、睦まじいガールズトークの欠片に耳を澄ませるのだった。
おわり
0
お気に入りに追加
53
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
Promise Ring
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
浅井夕海、OL。
下請け会社の社長、多賀谷さんを社長室に案内する際、ふたりっきりのエレベーターで突然、うなじにキスされました。
若くして独立し、業績も上々。
しかも独身でイケメン、そんな多賀谷社長が地味で無表情な私なんか相手にするはずなくて。
なのに次きたとき、やっぱりふたりっきりのエレベーターで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる