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2019・梅雨
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しおりを挟む「アスカ、お線香焚いた?匂いする…」
「え、そうかな…お香焚いたんだ…ごめん、気になるかな」
「ううん、平気…」
仕事終わりの迎えの車の中、潤は過敏になった嗅覚で飛鳥にほんのり付き纏う香りをズバリ言い当てた。
「ジュンちゃん…信じてもらえないだろうけど、結構最初からジュンちゃんとこうなるんじゃないかって思ってたんだよ」
「ん?夫婦ってこと?」
「そう…性格とかはあんまり合わないと思うんだけどね、大雑把でおっちょこちょいで…Mに堕ちきらないし家事は出来ないし…」
プレイメイトならMがいい、連れて歩くなら見目麗しい女性がいい、一緒に暮らすなら家事を分担できる人がいい。
理想は理想、飛鳥の希望は半分しか叶わなかったが彼にとって潤という存在は何にも代えがたい宝物である。
「年貢の納め時ってやつかぁ…ふー」
「デキ婚であっさり別れないように気をつけようねー」
もしかして妥協で入籍したの?そこまで聞きはしないが同等の意味の言葉を潤は意地悪な顔で飛鳥へ投げた。
「あー違うよ、子供も結婚もネガティブな受け取り方してないから、ごめん…ボクの、価値観とかの話だよ…」
「知ってるけど………浮気はダメだからね、」
「お互い様だね。会社の人だからってカフェでお茶するのはギリだよ」
仕返しとばかりに意地悪な表情を作って妻へ投げ返す。
「もー……しないよ…」
「ケンタじゃあるまいし?」
もはや死語の潤の元カレ、あれ以降連絡も来ないがきっと幸せに生きていてほしい、二人は言葉にこそ出さないが本心からそう願ってはいる。
「もう忘れよ、アスカって嫉妬深いのね、」
「そう…だね……実は…独占欲が強くて…いいカッコしぃだから失敗が怖くて…すましてたいから固執しないフリして…情けないね」
「人間らしい所もあるのね、ふふ」
「失礼な……ボクは泥臭い…ただの人間だよォ…」
住処に帰った二人は仲良く手を繋いでエレベーターを待つ。
男は夕食のメニューと手順を、女は読みかけになっている育児書の項目を頭にそれぞれ浮かべて、目が合えば微笑み合ってキスをした。
つづく
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