先生、マグロは好きですか?

あかね

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2019・梅雨

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 さて各種手続きはしたものの、姓が変わらなかったため潤の結婚情報は広まるのが遅く、彼女の腹が目立ち出してから事情を知らない者たちは驚いたようだ。


「所長、早番の朝礼できちんと発表しない?未婚の母だと思われてるけど不都合ない?」

「んー、どっちでもいいですけど…チーフに任せます」

 チーフフロア長・嘉島かしまの提案で遅ればせながら全体へ結婚・妊娠報告をして、潤は労られながら日々の仕事をこなしていった。


 そして半月後の飛鳥の帰郷で同棲再開、夫婦らしい生活が始まる。

「ジュンちゃん、そろそろ新しいブラ…もっと柔らかいやつ買わない?産前産後はきっともっと大きくなるよ」

「んー…任せるぅ…きぼぢわるい…」

「はいはい…」

飛鳥は洗濯物を畳みながらソファーに寝そべる潤を労り、片手でその腹を摩る。

「あんまりママを困らせるなよ、ベビちゃん…」

「ふぅ…悪阻つわりっていつか終わるのかなぁ…」

「そりゃそうだよ…長い人もいるけどね…無理しないで、何かして欲しいことある?」

「ん、キス、して」

顔を覗き込めば潤はパッチリと目を開き、ムニと笑って眼差しでおねだりをしてみせた。

「しょうがないな、ん♡」

「ん♡」

「安定期に入ったら…セックスしよう、ジュンちゃん…」

「うん♡」


 覆い被さったまま二人は抱き合い、以前より高い体温も、少しふっくらとした身体も、化粧ノリが悪くなった素顔も潤の全て全てを飛鳥は愛おしく大切に思う。

「愛してるよ、ジュンちゃん♡」

「んー、ナンバーワン?」

 潤がわざと皮肉でそう聞けば、

「オンリーワンだよ」

と飛鳥はバツが悪そうに答えた。

「必然よね?運命よね?」

「そうだね、なるべくしてなった運命…かな」

半分は本心、もう半分は建前…リップサービスでも己を曲げなかった飛鳥が簡単に「運命」と口にする。

「私じゃなきゃダメでしょ?」

「そうだね…ジュンちゃんはボクじゃなきゃ面倒見きれないだろうね…」

めくれたスカートの裾を直し、洗濯物へと手を戻した。

「もう、ちゃんと言ってよ…ぶー」

「ジュンちゃんじゃなきゃダメ。君以上にボクに合う人は居ない、……これでいい?」

「録音できなかった、もう1回、」

「やぁだよ、」


 流し目で潤を見遣っては「ふは」と笑い、手を動かす飛鳥は幸せそうに目を閉じる。
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