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2018・大暑
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しおりを挟むそして再び現在、プール。
「わ♡先生、早く、」
周回距離が200メートルほどの流れるプールへ移動し、貸し出しの小さなフロートを抱えた潤は水に攫われて行く。
「待ちなよ…」
飛鳥は細い腰を抱き、一緒にプカプカと浮きながらうつ伏せでされるがままに流された。
「先生、タトゥーとか入れてないよね?」
本日彼は潤と同じ柄のサーフパンツの下に足首までのラッシュガード、更に長袖のラッシュガードで上半身も覆っている。
彼女は分かりきった事だが改めて本人に確認した。
ウェーブがかった髪をひとつに括り、無精髭を蓄えサングラスを着け…どうも危ない男感が滲んでいるのだ。
「へ?入れてないよ…知ってるくせに、ボクの身体の隅々まで見てるでしょ♡」
「うん、まぁそうだけど…ベロにピアス開けるくらいだから、刺青とか抵抗無いのかと思って」
「肌、弱いんだよ。出てるところは日焼け止めガンガンに塗ってるから平気だけどね…」
潤のうなじへキスをして、飛鳥は水中で見えないのを良いことに股間をグイグイ押し付けた。
「ぎゃ」
「んー♡寝バックみたいで気持ちイイ…今夜は燃えるなぁ♡」
「先生、慎んでよ…」
「名前で呼んで、」
「アスカだって『所長』って呼んでるじゃない…」
「ボクら、こういう所は不器用だよねぇ」
いつも仕事終わりに落ち合う二人は職場での呼び方がなかなか抜けない。
公私を分けたいが潤はおそらくボロを出す、職場で名呼びされては都合が悪いから、いっそプライベートも役職で統一する方が安全か。
そんな事を考えつつ、他愛の無い話をしつつ、ぐるぐると何周か流された。
「日焼けが嫌ならナイトプールでも良かったのに」
ホテルの館内には20メートル四方ほどの屋内プールと小さくまん丸なジャグジーが複数個有り、夜間でも申し込みをすれば泳げる。
「あれは…上の階から丸見えじゃん。水槽の中の魚みたいで嫌だな」
「よくわかんないな」
フロートを枕にぷかぷかと漂いながら、少し曇ってきた空を見上げて潤が伸びをするように顔を仰け反らせる。
「このままシちゃいたいなー、ジュンちゃんエロいんだもん」
「そんな事ばっかり考えてるの?プールなんだから本来の楽しみ方しなよ」
「ふふ、後でスライダー行ってみる?ポロリに期待」
「ワンピースだからポロリしないよ」
どうせ部屋に帰れば夕飯までに1回は致すのだろう、潤はそれを分かっているから今はただ単純な遊びに興じたいのだ。
「ジュンちゃんお腹空かない?水分は摂ろうね」
「お母さんみたい…ふふ」
「それでもいいよ…ジュンちゃんは本来はひとり暮らしに向いてない、放っておくとすぐ食べ物にカビ生やすし」
実際これは本当で、潤は家事が疎かになりやすく…料理もしなければ掃除も微妙、せめてゴミ捨てだけはと頑張って部屋を維持している始末である。
忙しさを理由にすることが多いが彼女の家事能力の低さがそもそもの原因であり、最低限の衣食住がギリギリ…という残念さだった。
「へへ…もふもふになってたね…ヨーグルト」
「かつてヨーグルトだった何か、ね。もったいない。生産者への冒涜だよ」
「ごめんなさーい」
わざとカビを培養したわけではない。
食べかけを冷蔵庫へ戻していつかいつか…と思ううちにひと月が経っていたのだ。
「晩ご飯…バイキングだけど、食べる分だけ取るんだよ。ネタだけ剥がしてシャリ残すようなことしたら怒るからね」
「しないよ…さすがに」
根が怠惰というわけでもない、ただ家事がやる事リストの優先項目に上がってこない。
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