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2018・新緑
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しおりを挟む翌々日の夕方。
法人事業部のカウンターにて、潤は唯に案の定絡まれていた。
「ジュン…今日はハメてへんの?」
「何のこと?所長って呼んでくれる?真面目に仕事してますけど」
潤は顔は売り場に向け、目線だけ身長差のある唯へ落とす。
「…なぁ、お前…あの男でええの?無理してへん?」
それは冷やかしではなく、唯の本心からの言葉であった。
潤は少し考え、本音でもって答える。
「……んー…して、ない」
「ほうか、ならええわ…幸せ?」
「うん…毎刺激的で日楽しい。……ユイは?コーナー長になって忙しいだろうけど…」
「充実しとるよ。恋愛はまぁ…当分要らんかな」
「この前来てた若い男の子、常連さんでしょ?ああいう子、好みじゃない?」
唯には、はるばる京都から通い詰める常連客がいるのだが、外面が良い彼女が珍しくサッパリ塩対応するので気にかかっていたのだ。
「あー……ただの馴染みの客やから…うちのことはええねん」
ぶんぶんと首を横に振り唯が話を終わらせようとしたその時、16時を回って閉校したパソコン教室から飛鳥が退室してきた。
相変わらずのマスク着用、夏商戦が始まったというのに長袖のシャツ。
今日は午前中に年配の受講者が1人来ただけでもはや私室のようなこの部屋で、飛鳥は最近資格の勉強などを捗らせていた。
なんでも本業のウェブデザイナーの方が軌道に乗りそうで、役に立ちそうなスキルを今のうちに身につけておきたいらしい。
ちなみに副業、隣街のニューハーフSMクラブの仕事は最近はめっきり行っておらず、お金も貯まったしぼちぼち潮時かなとの事だった。
「あ、お疲れ様です、所長、笠置コーナー長」
「お疲れ様です…」
普段は会釈程度で気にも留めないのだが、通り過ぎる際にその耳に光ったピアスと赤い薔薇のピアスキャッチ、
「あ!」
と気付いた唯が声を上げた。
飛鳥は顔だけ少し振り返り、マスクの下でにっこりと笑ってその場を後にした。
「………はぁ、今まで気付かんかったわ…。ジュン…えらいのに捕まったなぁ…」
「そう…かな?」
「まぁ…幸せなんやったらええわー」
次のデートは4日後、危険日週の過ぎた潤は溜まった鬱憤と精をたっぷりと飛鳥からぶつけられることになる。
更に、玩具に虐められる様子を収めたムービーもその際に上映され、しばらくはそれをネタに虐められるのであった。
つづく
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