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2020・初春(最終章)
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しおりを挟む夜も9時を回ってホームページの更新兼延長保育のアルバイトを終えた飛鳥が帰宅すると、食卓には作り置きのおかずを盛った皿と空の茶碗が並んでいた。
作り置きはもちろん彼の作、しかしそれらをキレイに盛り付けるのは潤の仕事になっている。
まぁまぁの及第点、こぼさずに皿にのせただけでも拍手ものであった。
そしてその横には母子手帳とエコー写真が数枚、予定日と推定体重が印字されている。
「うーん……大きいなぁ…」
今時は3000グラムを超えれば充分に大きい胎児とされるらしい。
併せて元々の潤の骨格や体重を考えれば、これ以上胎で成長されると分娩はより過酷なものになるだろう。
「ふむ」
飛鳥は炊飯器からご飯をよそって静かにいただき、食器を食洗機に入れてタイマーをセット、冷蔵庫の中を確認してから寝室へ向かう。
「ただいま……あ、起きてた?」
「おかえり…」
ベッドに横になった潤はお腹ばかりがぽっこりと大きく出ていて、体を起こせばそこだけ捥げてしまうのではないかと心配になる程に素の体型とのギャップがあった。
「あぁジュンちゃん、いいよ、寝てて。ご飯ごちそうさま、どうだった?検診…まだまだかな?」
「うーん、結構大きくなってるから、歩いたりしましょうって」
もういわゆる臨月、予定日まで10日を切ってはいるがなかなか兆しは現れない。
もっとも今回が初出産になる潤には兆しがどんなものかも、腹の張りもイマイチ分かってはいない。
「ジュンちゃんは元が細いからね…はち切れそうだよ…おーい、早めに出ておいでってさ、チビちゃん」
寝転んで彼女の腹を摩り、口を近づけて中の人へとメッセージを送る。
「他には?糖とかは大丈夫だったかな?」
「うん、この前の血液の検査も大丈夫だったし…早く…あ!なんかね、看護師さんが帰り際に言ってたの。旦那さんと仲良くするのもいいよって」
「ん……ジュンちゃん、なんて言われた?そのままの言葉だった?」
これでも妊娠出産関連の文献や記事は読み漁った方だ、飛鳥は記憶に覚えのあるその言い回しに少しドギマギとしてしまう。
「うん?『仲良くするのも手よ』って」
「うーん……遠回しな言い方じゃ分からない人もいるだろうにね……」
「なに?」
「あのねジュンちゃん、『仲良く』って、『セックスしなさい』ってことだよ」
それは隠語、妊活などでも用いられる性行為を示す言葉である。
潤の通うクリニックは不妊外来も看板にしているくらいだから、看護師の間でもその言い方が馴染んでいるのだろう。
「え、え……あ、あー……、は?それと赤ちゃんとなんの関係が?」
「んー…その…刺激になって、子宮が収縮したり…産気づく可能性…うーん…」
「はぁー…」
「もちろん、浅くだよ、ん………スる?…ん♡」
飛鳥はずいと乗り出してアワアワと振れる唇にキスをした。
「あ……アスカは?……シたい?」
「いつでも臨戦態勢だよ♡」
パンパンに膨れた股間のファスナーを下ろし、男は張り詰めたパンツの窓に指を挿して中の肉を見せびらかす。
「わ、なら……うん……仲良く、しよ♡」
「嬉しいな、ジュンちゃんから誘ってくれるなんて♡横向きに寝て、後ろからするね、痛かったら言ってね、お腹もだよ」
飛鳥は下だけ脱いで明かりを小さくし、潤をコロンと反対に向かせてマタニティショーツを剥がしスキンの準備をした。
「ローション…少し付けるね、ん…」
「んッ♡」
「赤ちゃんどうこうって言うより…ただのセックスだから。苦しかったら言ってね、ん、挿れるよ…」
ムニュウと肉を拓いて異物が侵入してくる、内臓を触られて跳ね返されて…悦くはない。
飛鳥には申し訳ないが久々のセックスは潤にはそのように感じられた。
「ん…」
「うわ…あ…♡…ジュンちゃん…苦しくない?大丈夫かな…」
「大丈夫だよ、平気…」
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