先生、マグロは好きですか?

茜琉ぴーたん

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2019・梅雨

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 その後は飛鳥の立てた計画通りに事を進め、翌日は近くの産院を受診、心拍が確認できた。


 そして婚姻届も入手、その日休みで在宅していた同僚2人へ連絡を取ってファミレスにて証人欄へ署名捺印をしてもらう。

「おめでとう、ジュン……いや、急やな…感慨深いな」

「本当ね…体、辛かったでしょう…言ってくれれば良かったのに…」

 同僚の笠置かさぎ唯と刈田かりた美月みつき、彼女たちは二人が交際を始めた時から応援してきた。

 元カレの話も聞いた、唯に至っては売り場での戯れも目撃させられている。

「ジュン、幸せになりや、おい古賀こがセンセ、ジュンを泣かしたら承知せんぞ」

「分かってるって、笠置さん。ありがとうね、君たちはジュンちゃんの支えになってくれてたんだよね」

「妊娠したことまでは教えてくれへんかったけどな」

唯は飛鳥を睨み上げながら、案外秘密の多い潤へもチクリと針を刺す。

「不確定だったし…しょうがないじゃない…」

「言えよ、そんなんでよう仕事しとったな…しんどいやろ…」

「ごめん、次から言う」

 オレンジジュースをストローで掻き混ぜて、しょんぼりと吸い込む潤の肩を飛鳥が抱く。

「ごめんね、ボクが留守がちだったから話が進まなくてね、何かあれば…これまで通り助けてあげて欲しい。よろしくお願いします」

「いいのよ、先生。……ジュンちゃん、あの…食べ物とか気を付けてね?その…ジュンちゃんは家のことはからっきしじゃない…無理に家事して怪我したり小火ぼや起こしたりしちゃうと思うと気が気じゃないわ…」

「ふは、本当にね。ボク、家事は得意だから率先してやるよ。兼業主夫もいいよね、そうだ、ボクがジュンちゃんの苗字になるんだよ、だから職場では変わらず清里きよさと所長で呼んであげてね」

「あら、いいの?」

美月は割と驚いて、凹みっぱなしの潤を見遣った。

「うん…私はひとりっ子だから、清里姓を残そうって…昨日、親には取り急ぎ電話はしたの…父さん、喜んでた」

 潤は成人してから母を亡くしていて、故郷の北海道には父親だけがひとり暮らしをしている。

「そう…良かったわ」

「まだ働いてらっしゃるし、いずれ呼び寄せて一緒に暮らしてもいいし…早いうちに直接挨拶はしておきたいんだけど、なにぶん遠くてね」

「いいお婿さんね、ジュンちゃん♡」

「うん…もったいないよね、はは」


 見てもらいながら残りの欄を埋めて婚姻届を完成させ、潤と飛鳥はそれを提出するべく2人に見送られて役所へと発った。


 不備は無しで無事に受理…こうして6月某日に清里飛鳥・潤夫妻がひっそりと誕生、その足で母子手帳の交付も受け…飛鳥は最終の新幹線でまた大阪へ戻って行った。
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