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2019・新春

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「…くやしい…なんであんなに言われなきゃいけないの…持って生まれた身体でしょうが…自分の意思で伸びたわけじゃないわよ…」

 階段をヒールで鳴らして3階へ、事務所に入れば他店舗の管理職も数人集合していた。

 そんなに重要な会議だったか?と潤は置いてある資料を拾って後方へ下がる。

 そして

「お疲れ様です…今日って合同でしたっけ?」

と椅子に掛けた見慣れない女性に尋ねると、

「西店のWebカメラが壊れちゃって、数人でお邪魔したんです…あ、初めまして、昨年よりフロア長になりました小笠原おがさわらです、」

と立ち上がった彼女は潤よりも長身だった。


「初めまして…法人所長の清里です………あ、すみません、見惚みとれちゃった…」

 西店フロア長・小笠原奈々ななは身長172センチにヒールパンプス、主張の強い派手な女優顔をしている。

 良夢の事をあーだこーだ評しておいて外見のことについ言及してしまった…潤は「だめだこりゃ」と内心自分を責めた。

「やだ♡恥ずかしい、所長もおキレイね。お若いんでしょ?」

「そこまででは…来月30になります…」

「私はそれプラス3歳だわ、何かあったら助けてね。分かんないことだらけなのよォ、」

 眉毛の傾きに表情が乗ってオーバー気味だが分かりやすい、潤は彼女に直感で好感を持つ。

「いえいえ…私、会社で自分より背の高い女性に会ったことがなくて…すみません、不躾なことを」

「いいわよ、172センチあるの。足も大きいのよ、26センチ!所長のパンプス可愛いわね、それどこの?」

「これはネットショップで………、」



 会議が始まるまでの数分、潤は奈々と衣類などの話で盛り上がり、会議終了時にはお互いの連絡先を交換した。

「あー、会議もだけど実のある日だったわ、在庫とか困ったことあれば連絡ちょうだいね、所長♡」

「はい、お会いできて良かったです!」

潤も奈々と同じ気持ちで、彼女の話し方・考え方には得るものが多く、充足感と涸れていた自信がむくむくと湧き上がる。

 潤は駐車場まで降りて、男性陣の喫煙タイムが終わるのを奈々と待った。


「靴も服も、ピッタリの見つけるのは楽しいわよね、教えてもらった靴のサイト見てみるわ」

「はい、私も…ワイシャツ見てみます……あの、フロア長、小柄…な方がモテると思います?……すみません、仕事に関係無い話で」

「ん、モテると思うわよ。やっぱり小さいと可愛いし…まもりたくなるわよね。でも男の人によるでしょ?私は体格で選ぶような男は最初からノーセンキューよ、でもまぁまず見ちゃうわよね、コレ♡」

奈々は自身の大きな胸、聞くところによるとHカップの胸を指して眉尻を下げる。

「はい…」

「本能よね、一応抑えるブラもしたけど苦しいじゃない?…所長はコンプレックスなの?体型とか、」

「いえ、堂々としてるつもりですけど……小柄至上主義の子にマウントされちゃって、悔しい想いをしたところで…へへ」

マウントどころか大いにdisられたのだが、悲しいのでそこは端折はしょった。

「そう、通る道よね…私もめちゃくちゃ高いわけでもないし…バレーとかバスケの選手とかは努力で伸ばすんだものね、そういうのと一括りにできないし半端な高さなのよ…私は適度に自虐も入れたりするわよ、本心では思ってなくてもね。人を下げずに自分をアピールできたらそれが一番なんだけど…でもね、どうにもならないことでマウントする子はどこかで頭打つわよ、きっとね。…そう思って生きましょ、ふふ♡」

「はい…私、な…ナナさん、キレイで羨ましいです」

「ありがとォ♡私、本心だとジュンちゃんくらいの背が良かったかな……ふふ、貴女の泣きボクロ、チャーミングで好きよ、それ隠さない方がいいわ…あ、店長来た…じゃあね、また会いましょう」


 煙草を吸い終えた西店の男性陣と1台に乗り合わせ、奈々は帰って行く。


 良い出会いだった、体型の話もそうだが前向きな人と話せたことで潤のモチベーションはグイと上がり、午後からの仕事にも張り切れそうだった。
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