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2018・新緑
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「ヮ…、あ、それじゃ、んっ…これ1つ…買っテ帰るカラ…ァ」
「ジュン、」
腕を振り解いて踵を返そうとする潤の後ろ、唯がその腰へ抱きついて、妖しげに震える胎の上に手を添えた。
店内BGMの元では振動音はとても分からないが、脇腹へ耳を当てると何か聞こえるし、手に伝う振動と潤の挙動で仮説が立証されようとしている。
「なんや…震えてない?ジュン」
「ない、何も無いッ…ア♡」
「……彼氏さん、いい趣味してんね?」
唯は潤の背中から頭だけ出して飛鳥と対峙する。
その目は据わり、挑発するように潤のワンピースの胎の辺りを指でトントンと叩く。
「なんのコトか分かんないけど、ジュンちゃんは楽しそうだよね、ふふっ」
そう言って少し笑い、飛鳥はピアスを刺した舌をべぇと出して応えとする。
手の中の機械を少しいじれば、まるで唯の指にノックを返すように、ナカの畝りが向きを変えて強く振るった。
「うあッ♡…ア、」
もはや隠す気も無いのか潤は眉尻を下げ、リズミカルに抉られる感触に合わせて唇をピクピクと震わせる。
「ジュン、売り場ではしたない声出さんとってよぉ、他のお客さんもおんねんで?…まったく、神聖な職場で何してくれてんの?お前ら…」
もはや素に戻った唯が潤を、というより飛鳥を嗜める。
潤がこんな危険な遊びを自分から提案するはずがない、恐らくこの食えなそうな男の発案だろうと踏んでいる。
「あはは♡すみません、ジュンちゃん、会計して帰ろう」
飛鳥はようやく、手元のスイッチで潤を悩ませた規則的な振動をOFFにする。
「ジュン、おもろい彼氏やんか。しっかり飼われとるな」
「………知らナイ……トイレ行ってくる…」
潤はDVD-ROMを飛鳥に託してぎこちなく歩みを進め、「ついてこないで」とばかりに2人を睨んでから通路の先へ消えていった。
「…お兄さん、いつもこんな事してんの?」
残された飛鳥に腕組みした唯が尋ねる。
怒っているわけではない、むしろ自分も乗って遊んでしまったので人の事はとやかく言えないのだ。
「いいえ、初めてですよ?」
そう答えた後で、「いや、スキンとガーターベルトを持ってレジまで歩かせた事があった」と思い出したが、飛鳥関係無いだろうと言い直さなかった。
重ねて、
「せっかくジュンちゃんにお勧めしてくれたから、使用感くらい伝えておこうかと思ってさ」
と、玩具を買うよう唆した唯に片目を歪ませて笑いかける。
「…良さそうやね」
「でもさぁ、浮気の斡旋は良くないよ…せっかくボクに合わせて育てたのに」
「本人が選んだんやから…続きは家でしぃや、店内で盛んなよ」
「ふふ、もちろん。じゃ…失礼しますね」
飛鳥は涼しい顔で手に持ったDVD-ROMを棚へ返し、くるりと身を翻し潤を追って店の出口へ向けて歩き出す。
まとめた髪の後れ毛の向こうに、赤い薔薇を模したピアスキャッチが覗いた。
その後ろ姿に唯は
「買わへんのか…」
と呟く。
最初から、陥落した潤の姿を見せるために会社に立ち寄ったのだろう。
恐ろしい男だな、と唯は忌々しげに睨んでから定位置へ戻って行った。
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