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私も、女なんですけど

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 翌朝になっても電話は鳴らず、ホッとするやら悔しいやらで妙な寝覚めだった。

「…逃げたのかなぁ……気になるなぁ…あ、そうだ」

 あのバーのホームページに問い合わせ用のメールアドレスが載っていたので、お礼がてら尋ねてみることにした。


『昨夜、逃して頂いた者です。無事に家に帰ることが出来ました。ありがとうございました。あの後、あの男はどうなりましたでしょうか。元彼なのですが、最後の話し合いと言われて飲んでいました』

 送信してしばらく音沙汰無し、夜の仕事の方は昼までお休みかもと後で気付く。


 そして夕方近くになりメールボックスを確認してみると、

『店主です。ご無事で何よりでした。実は入店された時から、貴女の浮かない顔が気に掛かっていました。男性と合流しても嬉しそうにしないし、照れ隠しにしても酒を楽しみに来ている風ではなかったですし。うちは色の濃いブルーキュラソーを使っているので"映える"とSNSで話題になったことがありました。そこから睡眠剤を溶かしてもバレにくいなんて悪い方で拡散されたこともありまして、注意はするようにしていたんです。青系カクテルを最初から勧める行為や雰囲気、そして貴女がお手洗いに立ってからファジーネーブルに何か入れる仕草を見せたことから確信を持ってスタッフに指示して逃してもらいました。色が違いすぎるので入れるのは諦めたようですが。貴女がタクシーに乗ったのを確認してから男性に声を掛けて、もし混入していたら大きな罪になりますよと説明し、身分証明書と名刺を控えてからお帰り頂きました。差し出がましいようですが、お引越しなどされた方が良いかと思いますよ。』

と丁寧な返事が届いた。

 やはり薬を盛るつもりだったんだ。

 飲ませてホテルにでも連れ込んで、写真でも撮るつもりだったのだろうか。

 あるいは私を妊娠させて結婚に持ち込んだり、とか…身に迫る危機に背筋が凍る。

 私に何事か起こった場合にはバーのマスターが「そういえば男性がこんなことをしていました」と証言してくれるだろう。

 しかし彼が「死なば諸共」で無理心中など図ったとしたら。


 私は自身の身元と連絡先を記し改めてのお礼を重ねてバーへ送信し、引越し準備に取り掛かった。
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