俺が不甲斐ないのは、彼氏がスパダリすぎるからだ!・3

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
2 / 13

2

しおりを挟む

 居間に通されるとそれぞれ席について、母がお茶を出してくれた。

 前日からシミュレーションはしていたものの、いざとなると頭は真っ白だ。

 真秋の良いところを熱弁するか、言い訳がましく趣向の説明をするか。

 夏だというのに手先が震える、そこに

「ナツ、喋っても良いかな?」

と、真秋はそっと自身の手を重ねた。

「あ、うん…」

「夏李のお父さん、お母さん、はじめまして。僕、こういうものです」

アキは俺から手を離し、名刺を卓上に置いてまた手を戻す。

「建築士…さん、独立してらっしゃるのね」

「はい。自宅兼事務所で、夏李さんと暮らしています」

「あら、そうなの…お世話になっております」

「いえいえ」

 まったくその通りなんだよな、察して頭を下げる母に己の不甲斐なさが申し訳なくなる。

 父は「ふむ」といった表情で、真秋の語りを待っているようだった。


「僕は…数年前に夏李さんと呑み屋で出逢いまして、意気投合しまして。その頃は僕も社会人になったばかりで、経済的にも厳しかったものですから、夏李さんとルームシェアを始めたんです」

「そうなの」

「はい。友人として仲良くしていたんですが…僕は元々、男性を恋愛対象とする性分でして…平たく言うとゲイ、なんです」

「ほう」

「夏李さんとはそういうつもりで同居をした訳ではなかったんですが…共に暮らしていく中で、彼の良いところや魅力的な部分に男として惹かれてまして…交際をすることになったんです。それで、……、……、」

 最初から俺を恋愛対象に見てたくせに、真秋は多少の嘘を織り交ぜて説明する。

 父と母の相槌には言葉と目配せで応え、口ぶりは穏やかで説得力があった。

 でも真秋は、俺の趣向に関しては語らない。

 あくまで、真秋が俺に手を出したという体で話してくれている。

 そこは俺自身で白状しろということか、キリキリと痛む胃にお茶を流した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

手紙

ドラマチカ
BL
忘れらない思い出。高校で知り合って親友になった益子と郡山。一年、二年と共に過ごし、いつの間にか郡山に恋心を抱いていた益子。カッコよく、優しい郡山と一緒にいればいるほど好きになっていく。きっと郡山も同じ気持ちなのだろうと感じながらも、告白をする勇気もなく日々が過ぎていく。 そうこうしているうちに三年になり、高校生活も終わりが見えてきた。ずっと一緒にいたいと思いながら気持ちを伝えることができない益子。そして、誰よりも益子を大切に想っている郡山。二人の想いは思い出とともに記憶の中に残り続けている……。

ド天然アルファの執着はちょっとおかしい

のは
BL
一嶌はそれまで、オメガに興味が持てなかった。彼らには托卵の習慣があり、いつでも男を探しているからだ。だが澄也と名乗るオメガに出会い一嶌は恋に落ちた。その瞬間から一嶌の暴走が始まる。 【アルファ→なんかエリート。ベータ→一般人。オメガ→男女問わず子供産む(この世界では産卵)くらいのゆるいオメガバースなので優しい気持ちで読んでください】

理香は俺のカノジョじゃねえ

中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。

多分前世から続いているふたりの追いかけっこ

雨宮里玖
BL
執着ヤバめの美形攻め×絆されノンケ受け 《あらすじ》 高校に入って初日から桐野がやたらと蒼井に迫ってくる。うわ、こいつヤバい奴だ。関わってはいけないと蒼井は逃げる——。 桐野柊(17)高校三年生。風紀委員。芸能人。 蒼井(15)高校一年生。あだ名『アオ』。

幽閉された美しきナズナ

不来方しい
BL
控えめで目立たない准教授と生徒が恋に落ちます。 連れ子として華道の家に入ったのは、大学生の藤裔なずな(ふじすえなずな)。慣れない生活の中、母と新しい父との間に子供ができ、ますます居場所を失っていく。 居場所を求めて始めたアルバイトは、狭い和室で自由恋愛を楽しむという、一風変わったアルバイトだった。 客人としてやってきたのは、挙動不審で恋愛が不慣れな男性。諏訪京介と名乗った。触れようとすれば逃げ、ろくに話もしなかったのに、また来ますと告げて消えた彼。二度と会わないだろうと思っていた矢先、新しく大学の研究グループに加わると紹介されたのは、なずなを買ったあの男性だった。  呆然とする諏訪京介を前に、なずなは知らないふりを貫き通す──。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき(藤吉めぐみ)
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

処理中です...