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おまけ・遠距離中の二人(88話)

玄関ファイト・5

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 心平の気持ちも意図も分かる、でもこの先でおそらく詰むだろうことを悠里は察する。

 気丈に振る舞う心平だが、人の困り顔には弱い。

 ノリでも「やめてぇ」などと言えば、一旦は萎えてしまうだろう。

 そうすればこのセックスはグダグダになって気まずくなって終わり、誰もスッキリせず変な空気が続いてしまう。

 ならば終始"わからせる"セックスをするよりも、"仲直り"セックスに早めに切り替えた方が双方楽なのである。


「(僕が涙声で謝ったら心平くんはきっとショボンってなるんだ、誰も得しない)」

 悠里は玄関扉に頬を付けて左手を離し、腰を掴む心平の手の上に重ねた。

「……?」

「ごめんね、心平くん、もう、心配させないから、」

「あ、」

 悠里が潤んだ瞳で誓いを立てると、心平の険しかった眉間が穏やかになる。

 それどころか申し訳なさがそこに溜まって、眉が八の字に傾こうとする。

「心平くん、お仕置きはもう充分だよ、お願い、後はベッドで、僕、頑張るから」

「…あの、頭に血が上っちゃって、ごめんね」

「ううん、嫉妬してくれて嬉しい、お仕置きも新鮮で気持ち良かった…だから、僕、もっとイチャイチャしたいよ…」

「…うん、じゃあ、このまま、ベッドに」

「(良かった…)」

 悠里と心平は運動会のムカデ競争のように、ひょこひょこと繋がったままベッドへと移動した。

 そしてそこからはいつも通り、に少し劣情をプラスした、ねっとりとしたセックスを行った。


 悠里は心平の雄みを頼もしくカッコいいと慕うが、理不尽に罪を着せられるのはプライドが許さないのである。

 罪があれば罰は受け入れる、しかし今回は心平の勝手なジェラシーからの暴挙だった。

「(あんな女、何とも思ってないっての…なまじ記憶力があるから顔と名前は憶えちゃうけどさ……あんな高圧的な心平くんは、柄じゃないよ。僕よりちょっと、上に居てくれるのがちょうど良いんだ)」

「悠里?他のこと考えてるでしょ」

「…心平くんのことだけだよ、妬かせてごめんね、僕はいつだって、心平くんのことしか考えてないよ」

「ありがとう」


 4年の遠距離恋愛の中に、こんな出来事があった。

 どれもこれも、後で思い返せばくすぐったい思い出なのであった。



おわり
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