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「んー…僕が支配して、心平くんが従って、家庭教師の時みたいな…変な関係になってたと思う。そうならなくて済んだのは、心平くんがちゃんと抵抗してくれたから、僕を叱ってくれたからなんだ」

「そうかな?まぁ適性はどうか分からないけど、抱くからには強い気持ちであろうと心掛けてるよ」

「…ありがとう。僕ね、ワガママなお坊ちゃんだからさ、これからも迷惑掛けるかもしれない。でも、心平くんのことはずっと大切にするから。離さないからね!」

「ふふ、うん、お願いします」


 初体験という山場を超えた二人は、ひとつ大人になった。

 絆は強固になり、それ故に離れがたく淋しくなる。

「ずっと、一緒に居たい」

「…この近くに就職しようか?」

「そ、そんなの悪いよ、僕が卒業したら地元に戻るんだし」

「だよね」

 ボケでも冗談でも、提案してくれたのは嬉しかった。

 心平が都内に就職するのは無いことではないが、地域を絞ってそこから希望業種を探すのは現実的ではない。

 将来的に家業を手伝って欲しい願望はあるものの、悠里の父もまだバリバリだしそこまでの融通は利きそうにない。


「…僕が帰るまで…浮気、しないでね」

「僕、ちゃんとした恋愛感情抱いたの悠里くんが初めてだからなぁ…悠里くんを上回る魅力のある人、地元には居ないと思うなぁ」

「居ても居なくても、しないでよ」

「もちろん…悠里くんもね」

 実は心平は、午前中の買い物帰りにこっそりジムを覗いていた。

 明り採りのために全面ガラス張りで、しかしトレーニング風景が外から見えないように床から2メートルほどはステッカーで隠してある。

 入り口は受付が見えるようにそのままのガラス戸で、そこから心平は中の様子を窺ったのだ。

 覗いた時、これからなのか終わったのか、若い女子に受付の悠里は話し掛けられていた。

 心平の気配にも気付かないくらい、にこやかに談笑している風に見えた。

 心平はモテない男子の本能で、女子が積極的に攻めている雰囲気を察した。

 目線や仕草から、悠里を落としに掛かっていると感じたのだ。


 悠里はイケメンだし実家がお金持ちだしモテる、自分の恋人が他の人間にアプローチされているのは気分が悪かった。

 そんなことがあったからこそ、今夜の心平はオラオラ度をちょっぴり上げて"君は僕の男だ"と顕示した訳だ。

 悠里にしてみれば言い寄られるのは日常茶飯事で、特別珍しいトピックでもないから口に出さなかっただけなのだが。
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