君は、裸の王子さま—イタズラ御曹司は気弱な幼馴染みが欲しくてたまらない!

茜琉ぴーたん

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「お邪魔します。綺麗なお部屋だね」

「築年数は経ってるんだけど、リフォームしてるんだって」

 悠里の住むアパートは、見た目は古びた建物だった。

 聞いていた通り1階には悠里の父・幸司こうじが経営する『極楽寺ごくらくじフィットネスジム』が入っており、2階の部屋にも機械音が少々響いている。

「…下の音、聞こえるね」

「うん、だから上のこの部屋を率先して借りさせてもらったんだって。この階はあと3部屋あるけど、うるさくなるお詫びにクーポン配ったよ。本当は24時間ジムにしたいんだけど、住民が近いとどうしてもね」

 下のジムは、夜の10時には仕舞う。

 会社帰りのサラリーマンの需要が減るものの、学生が使いやすい価格設定にしてそちらで稼ぐつもりのようだ。


「そっか…夕飯、何食べようか」

「ご飯の前に…心平くん、あの…キス、したい」

唐突に、悠里は願望を口にする。

 心平は驚くも、切り出してくれたことに感謝をして

「…うん、おいで」

と微笑む。


 このやり取りで、心平の心は決まった。

 お願いして受け入れる自分、包むと包まれる関係が成り立っていた。

 心平はベッドに腰掛けて、悠里を胸に迎える。

「…淋しかった」

「うん、忙しくて、淋しかったね」

「…好き、心平くん」

「僕も」

 しょげた猫がじゃれるように、悠里は心平の唇を求めた。

 ちゅっちゅと甘い音が部屋に鳴って、心平は悠里の腰を抱き頭をポンポンと撫でる。

「心平くん、余裕ぶってムカつく」

「なんでだよ…僕なりに色々と考えたんだ、悠里くんとどうやって…スるか」

「…どっちか、ってこと?」

「うん、僕の考えが悠里くんの希望に合致してるかは分からないよ。でも僕は押し通すつもりでいるよ」


 心平のただならぬ決意表明に、ゴクンと悠里の喉が鳴る。

 真意を問い質すのは野暮か、腕に巻かれている今の状況からそれは分かる。
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