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しおりを挟む「喧騒、って感じだったね。悠里くんのお家の周りはどうなの?」
電車に揺られ、心平は悠里へ尋ねる。
昼から二人はいわゆる観光地を巡り、夕食は家で摂ろうと家に向かっているところだ。
「ここまでじゃないよ。昼間は煩いけど学校に居れば関係無いし、夜は実家と変わらないくらいかな」
何でもない世間話をして、駅が近付けば悠里の表情が強張る。
「(悠里くん、緊張してるのかな…そんなすぐに、エッチしないんだけど…)」
心平は悠里の心情を読み取り、隠れてはにかむ。
悠里が覚悟し準備していたのと同様に、心平も就活の傍らセックスの勉強をしていた。
軽めの文献から入り、動画サイトのサンプルを視聴し、リアルさが売りのBLコミックにて心情の考察も行った。
かつては排泄器に興奮などし得なかった心平だが、悠里を恋人として捉え"その一部"と思えばイケる気がしている。
とはいえ実践経験も無し、そもそもが役割分担の話し合いもしていない。
もしいざ始まって「何してんの、心平くんがネコだよ」と言われたら悠里の説得をせねばならない。
気弱でお人好しで優しい心平だが、大学生活も終盤に差し掛かり、年上の威厳なるものが育って来ているのだ。
リードしたい、されたことをやり返してやりたい。
でもそれは報復ではなくて、共に気持ち良くなるためのスパイスとして取り入れたい。
タチの役割、ネコの役目、パターンは理解している。
自分は恐らく"タチ"になるが、想いが募れば悠里のを舐めてみても良いと思えている。
基本は踏襲しながらも自分なりのアレンジを加えれば良いのでは、童貞歴イコール年齢の心平は遊び心も抱いていた。
なお、心平はその気弱さから緊張しやすく、腹も下しやすい。
なので万が一にも直前に下しなどしたら様々な面で悠里に迷惑が掛かるので…ネコをしたくないなんて理由もあった。
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