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「(…今日、心平くんは…僕を…)」

 この連休、心平は悠里の部屋に泊まることにしている。

 故郷から出て来た幼馴染みを部屋に泊める、それだけなのにそれだけじゃない。

 二人は今夜、ついに体を許し合う。

 決めている訳ではなく、覚悟をしている。

 背伸びを止めた悠里は、心平に対しては年下然として振る舞うことが増えた。

 おかしな気負いを捨て、無邪気な弟のように、けれど意地っ張りなところは性分だから残っている。

 生まれ持っての王様気質も、健在だ。

 だから今日も奢ろうとしていたのだが、その悠里が今夜は体を差し出すつもりでいる。

 
 忙しい中で悠里は心平を抱くシミュレーションをしてみたのだが、上手くイメージが湧かなかった。

 これまでリードは自分の役割と信じて疑わなかったが、それは日常生活だけで充分と考え出している。

 飄々ひょうひょうと生きて来て、大学で自分より賢い者に沢山会って世界の広さと己の小ささを感じてしまった。

 知らないことを始める怖気おじけにバシバシ打たれて、心平と居る時くらい身を任せたいと思うようになった。

 毅然とした態度で自分をフった心平をカッコいいと感じていたし、翻弄されて許された時に言い得ぬ悦びも抱いた。

 悠里にとって心平は"頼れるお兄さん"、その認識が消えそうにないのだ。

 泣き顔や情けない顔にゾクゾクするのも本当なのだが、それは強制自慰行為で既に見た。

 つまりは穴に挿れている時、心平はあのような表情をすることが分かっている。

 恥ずかしさで困っていたのもあるが、快感に溺れてとろけていたあの顔、それを自分の穴で再現してもらいたい。

 もし心平が「出来ない」と泣き言を漏らせば、脅すでもしてさせれば良い。

 される側が強いるのも不思議だが、悠里はお坊ちゃんのワガママを炸裂させて言いなりに出来そうだと踏んでいる。

 本当に無理なら互いに手で抜き合っても良かろう、徐々に慣れてもらえば良い。

 そんな訳で、ここ最近の悠里は後ろをほぐしたり慣らしたり、心平を気持ち良くするための鍛錬を積んでいた。


 たまに冷静になり「僕は何をしてるんだ」とショックを受けることもある。

 けれど準備したココに心平が入って来てくれたなら、堪らない表情を見せてくれたなら。

 失敗して病院のお世話になっても構わない、それくらいの覚悟があった。
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