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「美味しいね」

提供されたスパゲティを食し、心平は悠里に笑い掛ける。

 レトルトかと思いきやマスターお手製らしく、悠里も素直に

「うん、すごく美味しい」

と応えた。

「オムライスも…美味しいね」

「うん…僕、すごく幸せ」


 たかが食事、されど食事。

 どこで何を食べても、好いた相手との食事に勝るものは無い。

 心平もそれはほんのり感じていて、はぐはぐと平らげる悠里を微笑ましく見守る。

「普段、料理とかしてるの?」

「あー…してない。近くのコンビニで、買っちゃってる」

「忙しいもんね、落ち着いたら自炊してみたら良いよ」

「心平くんは、ひとり暮らししないの?」

「就職先次第かな」

 心平は商社や小売を候補として絞っている。

 営業よりは事務方、総務や経理などが向いていると考えていた。

「…地元?」

「他県に出るかもしれないし…上京するかもしれない…まだ分からないね」

「ふぅん…僕は…卒業したら家業を継ぐよ。もし困ったら、うちで働いてね」

「…うん、ありがとう」

 心平は当然そこに甘える気は無くて、冗談であることは分かっている。

 でも悠里が本気でその冗談を言っていることも知っているので、心の隅に保険として預からせてもらうことにした。



 食べ終わったら、二人はぷらぷらと周辺を歩いてみた。

 待ち合わせはどこでも良かったのだが、どうせだからと今回は都心に近い場所にした。

 人が多くてビルが多くて、騒々しくて落ち着かない。

 そこそこ街の郊外で生まれ育った二人には、東京は刺激が強過ぎた。
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