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しおりを挟む「…彼氏、できちゃった」
夜、悠里はベッドに横たわりぽつり呟く。
先程まで心平とはメッセージのやり取りをしており、就寝の挨拶を交わしたところだった。
やっと得た宝物を、大切にせねばならない。
決して手放したくない、達成感と安堵で妙に高揚してしまう。
「遠距離かぁ」
近くに住めたら頻繁に会ってイチャイチャできるのに、しかし上京することを決めたのは自分だから言葉には出さない。
自分の力を試したかったし、心平とどうにもならなかった時の保険も作っておきたかった。
学があればどうとでもなるし、環境を変えたら心平を早く忘れられると思っていた。
しかしよく成就したものだ、悠里は自分でも信じられない。
エロガキを捨てずにいてくれた心平に感謝である。
さてここから間柄を発展させる権利を得た訳だが、心平と同じく悠里も役割について考えが及ぶ。
悠里は恋仲になりたくて手っ取り早いエロという手法を使った訳だが、あくまでイチャイチャしたかっただけなのだ。
股間に顔を埋められた時も直接の感触と心平の表情に当てられただけで、「抱きたい」と強く思ってはいなかった。
優位性を示して逆らえないようにしただけ、挿すだ挿されるだは雲の上の話だった。
オナホールを使った時は興奮を嫌悪感が追い越した、あれはフラれた後だったから気持ち悪くなっただけなのか。
率先して動くのは自分だと思い込んでいたが、あれも無自覚に他者を舐めていただけだとしたら。
「(リードは僕でしょ?なら僕が抱かなきゃ…いや、これも自己中なのかな……さっきのキス…心平くん、カッコよかった…)」
泣き顔で見上げる心平も、不安そうに見下ろす心平も、どちらも見てみたい。
ならば交代制にするか、それを話し合いで決めるのも無粋か。
悠里はモゾモゾと、パジャマの上から尻を探ってみる。
理屈は分かっているし、痛いだろうことも知っている。
けれど心平が「ごめんね、痛いよね」と励ましてくれるなら、「大丈夫だよ」と応えるだろう。
「(僕、優位に立ちたいけど、カッコいい心平くんに…抱かれたい、なぁ…)」
ぼんやりと定まる指針、高まる期待。
ほわほわと温かい気持ちを胸に、悠里はぎゅうと丸まって、いつの間にか眠りに落ちるのだった。
つづく
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