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しおりを挟む数分後、悠里はやっと喋れるようになった。
「…心平くんはさ、身の危険とか、感じないの?僕は、心平くんが好きだって、襲っちゃうかもしれないんだよ?危機感は無いの?」
まだ言うかと心平は面食らって、しかし
「しない、と思っちゃってる。今日はご両親も1階に居るし、そこまで子供じゃないかなって」
と苦笑する。
「…意識、できない?」
「ごめんね、まだ…分からない。悠里くんのことは嫌いじゃないけど、それを恋愛の方に転換するのは難しいよ」
「…なら、家庭教師は受けてくれるよね?意識しないならオッケーじゃん」
「あ、そっちで来るか」
意識してもしなくても両勝ちか、困った心平は頭を悩ませる。
好きになるか分からないのに気を持たせるのもどうなのか、しかも本来の家庭教師の業務さえ心平では力不足だ。
「(悠里くん、僕の何がそんなに良いんだろう)」
心平はこれまで良い人だったからそれなりに友人はいて、過不足の無い人生を送って来れた。
ただ、特別に秀でていたり優れているところなど持っていない。
本人の自己評価はそんなところ、悠里が手に入れたいほどの至宝ではないと思っている。
「あのさ、悠里くんは…僕の何がそんなに…す、好きでいてくれるのかな」
自分で聞くのも恥ずかしいが、単刀直入に心平は斬り込んだ。
落ち着いた悠里は、
「幼馴染みだから、じゃダメなのかな。心平くんの優しくて、気弱で、面倒見が良くて、僕のワガママに付き合ってくれて…見た目だって好きだよ、困った顔も好き。泣きそうになってたり、呆れてる顔も…僕がそんな表情ばっかりさせて来たんだってことは分かってる、反省もしてる。え、笑顔だって好きだよ、もっと見たい」
ともじもじ答える。
我ながらガキ臭いと羞恥に頬を染め、しかし開き直ってキリッと眉は吊り上がる。
「…悠里くんにとって、僕って都合良過ぎない?」
「悪いと思ってるよ。好きだから困らせたいってのもあったし…別に、僕はサディストじゃない。自己中なボンボンなんだから、こうもなるよ!」
「自覚してるのか…いや、そこまでは思わないけど」
このひと月、悠里は自己分析も行った。
人に対して間違ったことをしてないか、人に与える印象はどうなっているか。
親しい友人に尋ねもしたし、辛辣な意見も貰い参考にした。
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