君は、裸の王子さま—イタズラ御曹司は気弱な幼馴染みが欲しくてたまらない!

茜琉ぴーたん

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「(僕にしては…はっきり言えたんじゃないかな)」

 全く愉しんでいなかったと言えば、それは嘘だ。

 初めてのことに高揚したし、時に快感もあった。

 けれどそこから恋愛に気持ちが向くのは別問題だ。

 頭に血が昇っていると正常な判断がつかなくなり、平常時ではしない決断や物言いをしてしまったりするものだ。

 目先の快楽に溺れて「妻とは離婚する」と不倫相手に言ってしまったり、そこまで好きじゃない相手に「愛してる」と叫んでしまったり。

 性に限らず、長距離を走り終わったクタクタ状態で投げやりな気持ちになったり、命の危機があるときに手近な人に好意を抱いてしまったり。

 吊り橋効果というやつだ、共にハラハラドキドキを体感すると相手に特別な感情が生まれやすいという…冷静になると「あれ?」と冷めてしまうやつだ。

 あの心拍が上がった状態で例えばキスなどして押し倒されて、となっていたら最後までしてしまっていた可能性はある。

 絶対にあり得ないなんて、心平にはそれを断言できる自信は無い。


「(貴重な経験だったな…せめて、悠里くんが真面目に告白してくれてたら…違ったのかもな…)」

 手順を踏んで、想いを伝えてもらっていたら、夏休み中に両想いになれていたかもしれない。

 心平は男性との恋愛はよく分からないと言ったが、くくりに関わらず"悠里"とカップルになることはさほど難しいことではなかった。

 幼馴染みで見た目も悪くなく、聡明で快活で、自分のことを好いてくれていて、その上少しエッチで。

 しかし、やはり過程が惜しかった。

 悠里が見せた加虐性を心平は恐れたし、嗜虐心を垣間見てドン引きした。

 ラッキースケベ程度なら笑えたが、そこに愛情が感じ取れなかったから気持ちが悪かった。

 手っ取り早くパートナーを見つけるなら体先行でも良かったろう、でも土台が出来ていない心平には荷が重かった。


「(淋しさはある、また、笑って話せる日が来れば良いなぁ)」

 心平は家に帰り、まとまらないがスッキリした気持ちでベッドにダイブした。
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