君は、裸の王子さま—イタズラ御曹司は気弱な幼馴染みが欲しくてたまらない!

茜琉ぴーたん

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 さて心平はピュアなので、このとき消しゴムを不自然に落としたのも蹴ったのも悠里だということを失念していた。

 消しゴムは最初ペンケースの中に入っており、机上には出していなかったのだが…心平はわざとだなんて思いもしない。

 全ては少年の悪戯、もといトラップであったのに心平は気づく由もなかった。


 机の下に入ってしまった心平は壁際まで行き着いた消しゴムを拾い、後退しようとするも尻が詰まっていた。

「(うん?)」

 足先と尻に当たるのは、悠里が座っているキャスター付きのイスの脚だ。

 自分がスムーズに出るためには悠里に動いてもらわねばならない、そうすると勉学の妨げになる。

 そんな少しの邪魔でさえ、してしまうのが申し訳ないと考えるのが心平の良さであり悪さでもあった。

 半端にはみ出ていた足腰をすっぽり、心平は自ら机の下に格納する。

 四つん這いの状態では、膝と手の平が痛くもあったのだ。


 頭上からは、カリカリと悠里の筆音が聞こえる。

 メモか、もう解答に入っているのか、いよいよ心平は声を掛けることが出来ない。

「先生、ごめん、リスニングに集中してて…押しちゃった」

 悠里はまだ耳に意識をやっているようで、言葉に心がこもっていない。

「あ、良いよ、終わるまで待つから、じっくり解いて、」

普通ならこの隙に出るだろうに、人の良い心平は檻に残ってしまう。

 「ふふ」と笑う声がしたようなしてないような、心平がサカサカと体を旋回させて体勢を整えていると、先程よりも机の下に入る光が減っているように感じた。

 正確には、入口を塞ぐ悠里が、イスごと机の下に迫って来ていた。

 机の下にはイスと脚が入る、それは当たり前のことだ。

 その当たり前に干渉しないよう、優しいを通り越し愚かな心平は奥へ追いやられる。

 そこで

「(どうしてこうなったのか…)」

になった訳である。
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