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おまけ・遠距離中の二人(88話)

落書き・1

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 悠里が大学4年生だった頃のこと。


 泊まりに来た心平は悠里を脱がしてやり、さぁいよいよ、というタイミングで着信音が鳴った。

「僕じゃない…悠里くんのだ」

「なんだろ、仕事のことかな……ごめん心平くん、大学の友達なんだけど」

「…良いよ、急ぎの話だと悪いし」

心平は余裕ぶって、通話を聞いてない風に背を向ける。

 隣に居てもちろん聞こえているのだが、「聞きません」という意思表示なので良いのである。


「ごめんね……もしもし?どうしたの」

『……、………、』

「あー、そうなんだ。ありがとう」

『………、………』


 漏れ聞こえる声によると、ゼミの課題の提出日が延期になったとか、そのような内容らしかった。

「(卒論の時期だもんね、僕も忙しかったし、気持ちは分かる)」

 この頃悠里は下のジムの代表を任されており、就活はすっ飛ばして仕事と単位とゼミに奔走していた。

 一方の心平は社会人3年目、業務を覚えて要領良くこなし始めている。

 自身の学生時代のことなんかに思いを馳せては、悠里の電話が終わるのを待っていた。


「(…長い)」

 ちょっとした連絡かと思いきや、意外と通話は長引く。

 3分、5分、もう心平の興奮は冷めてしまっていた。

 お喋りが楽しいのは分かるが、「用事があるから」などと断れないものか。

 手持ち無沙汰な心平の頭に、ピーンと悪いアイデアが浮かぶ。

「(イタズラしちゃお)」


 心平は通話中の悠里へと振り返り、その股間を指で弾いた。

「ひッ⁉︎…い、いや、なんでもない、虫がいただけ!」

悠里はスマートフォン片手に心平を睨み、おイタをする指を捕まえる。

「(……左手もありますけども)」

 心平はフリーの左手でピンピンと竿や玉をつつき、その度に悠里は「ひゃあ」「はァ♡」と鳴く。


 睨む瞳に涙が溜まる、けれどイタズラっ子心平は意に介さない。

「(電話、終われば良いのにさ)」

 学友なら学校で会えるのだろう、ならば自分を優先して欲しい。

 ただでさえ寸止めを食らってモヤモヤしているというのに。
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