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 高校は夏休みに入り、心平しんぺいは週2回も悠里ゆうり宅へ通うようになった。

 意外や悠里は真面目に勉強し、参考書も問題集もサクサクと進む。

 元々が秀才なのだから教えることも無し、しかし心平は斜め後ろから見守っては採点を続けた。


 そんな夏休みも終盤に差し掛かり、総決算とも言える模擬テストを受けさせた日のこと。

 科目は外国語、英語のリーディングとリスニングだった。

 思えばあのトラップを仕掛けられたのもリスニング中だったっけ、心平は胸騒ぎを感じつつ教材をセットする。

 あの日以来、これといって何も起こっていない。

 雑談の量は増えたが、性的なことや恋愛に関することは特に聞かれてもいない。

 一時の気の迷いだったのか、それとも考えを改めたのか…心平が壁の時計を確認したら、悠里がスッと机の引き出しを開けた。

「…?」

「先生、これ」

「はい?」

 手渡された段ボール箱を開けると、中には可愛らしい女の子のイラストが描かれた箱が入っていた。

「それの使い方、教えて欲しいんだけど」

「…これって……うわ、あ!」

心平はおののいて、ポーンと天井へと箱を投げてしまう。


 悠里は渋々それをキャッチして、再度

「使い方、僕分かんないから教えて欲しいんだ」

と中箱を取り出して心平の目の前に掲げた。

「…あの、」

「これ、何て書いてある?読んで?」

「よ、読めない、」

「えぇ?大学生なのに読めないの?じゃあ父さんにメールで聞こうかな」

「や、やめてあげて、よ、読むから…」

 心平は箱に目線をチラチラ合わせながら、

「ひらけ、せ、せいへき…おとこのこ、すぺしゃる…」

と切れ切れに読み上げる。

 それは男性器用の性処理玩具、平たく言えばオナホール、であった。

 心平はそのグッズの存在は知っていたが、まさか男性の後ろを模したものもあるなんて知らなかった。

 開封時は女の子だと思ったイラストは、文字と照合すれば男の子だということが分かる。

 生意気そうな男の子、まるで女の子のような可愛さの男の子だ。
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