80 / 80
ファミリー
80(最終話)
しおりを挟む「…ねぇ、電飾変えた?」
「うん、色だけな。もうちょいヒカルが大きなったらヘッドレストの後ろにタブレット付けてアニメとか観れるようにしたるよ」
「…シンタローさん、『子供に車の名前は付けへんかってんな』って、母さんとミラちゃんが言うてたよ」
「うーん…男の子っぽい車名が今ひとつ無かってんな…キラキラすぎんのも可哀想やろ?それにうちは名字に『くるま』付いてんねんから…お腹いっぱいやろ」
「まぁね」
初めてのデートから数えると丸5年…今では睦じい夫婦となった秋花と晋太郎は、生後3ヶ月の愛息子・光を連れて車崎の実家へと走る。
「ミズモリに顔出して、俺連休貰うてるから今夜はうちで泊まりな、オカンがご馳走作ってくれてるわ」
「おー、楽しみ…でも夜泣きとか迷惑かけへんかな?」
「んー…二重窓やし大丈夫やろ…普段から近所も付き合いは密にしてるから…苦情付けて来るようなケチな人はおらん…と思うわ」
ゆくゆくは彼の実家に入る日が来るかもしれない、秋花は義両親だけでなく周囲の住民を含めた環境も気にしていた。
「ならええか………ふー……シンタローさん、寂しかった?」
「寂しかったよ…昼間にちょっとしか会えへんねんもん…休みに行ってもヒカル寝てて反応無かったりしたしやぁ、お義母さんたちいてるからシューカにも触れへんし…」
産後の肥立ちが悪かったのと会社が立て込んでいたせいで里帰りは同市内なのに多めの3ヶ月。
臨月から数えて4ヶ月間を独りで過ごした車崎は、数周してもその寂しさが振り切れていなかった。
「浮気とかしてへん?」
「阿呆、するかいな………………え、AVでオナニーはノーカンやろ?」
「ノーカン」
「セーフ……なに、ぼちぼち相手してくれんの?」
「うん…ちょっとならね」
妻が優しい声色で応えれば、夫は細い目を見開いて嬉しそうに笑う。
「マジか……ほな寄り道や、ゴム買わな」
「明日でもええやん、自宅に戻る時」
「それもそうか…」
「ストックは?」
「ちょうど切らしてんねん……いや、あの…オナニーにな、使うてん…」
自慰行為にスキンを消費するということは器具を使用したということか、秋花は事態を飲み込むと
「オナホールにゴム使うたんか…ふふっ…エッチやのに真面目、」
と明け透けに夫を褒めそやした。
「いや、繰り返し使いたいし…いや、うん、せやろ、真面目な仕事人よ」
「うん……そういうとこも愛してる、シンタローさん」
信号待ちで軽く振り向いた車崎の骨張った頬を息子にするようにつんつんと突つけば、
「評価ポイントがおかしないか?」
と夫は前を向き直し間抜けな顔でミラーを覗く。
正面の信号が青に変わり車列が進み始めて、秋花が
「安全運転で頼んます」
としっとり伝えると、夫は
「もちろんよ、シューカ♡」
とコアラの様に愛らしく笑った。
おしまい
0
お気に入りに追加
9
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる