彼女は銀狼ギャル、ときどきコアラ

茜琉ぴーたん

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ファミリー

80(最終話)

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「…ねぇ、電飾変えた?」

「うん、色だけな。もうちょいヒカルが大きなったらヘッドレストの後ろにタブレット付けてアニメとか観れるようにしたるよ」

「…シンタローさん、『子供に車の名前は付けへんかってんな』って、母さんとミラちゃんが言うてたよ」

「うーん…男の子っぽい車名が今ひとつ無かってんな…キラキラすぎんのも可哀想やろ?それにうちは名字に『くるま』付いてんねんから…お腹いっぱいやろ」

「まぁね」

 初めてのデートから数えると丸5年…今では睦じい夫婦となった秋花と晋太郎は、生後3ヶ月の愛息子・ひかるを連れて車崎の実家へと走る。

「ミズモリに顔出して、俺連休貰うてるから今夜はうちで泊まりな、オカンがご馳走作ってくれてるわ」

「おー、楽しみ…でも夜泣きとか迷惑かけへんかな?」

「んー…二重窓やし大丈夫やろ…普段から近所も付き合いは密にしてるから…苦情付けて来るようなケチな人はおらん…と思うわ」

 ゆくゆくは彼の実家に入る日が来るかもしれない、秋花は義両親だけでなく周囲の住民を含めた環境も気にしていた。


「ならええか………ふー……シンタローさん、寂しかった?」

「寂しかったよ…昼間にちょっとしか会えへんねんもん…休みに行ってもヒカル寝てて反応無かったりしたしやぁ、お義母さんたちいてるからシューカにも触れへんし…」

 産後の肥立ちが悪かったのと会社が立て込んでいたせいで里帰りは同市内なのに多めの3ヶ月。

 臨月から数えて4ヶ月間を独りで過ごした車崎は、数周してもその寂しさが振り切れていなかった。


「浮気とかしてへん?」

「阿呆、するかいな………………え、AVでオナニーはノーカンやろ?」

「ノーカン」

「セーフ……なに、ぼちぼち相手してくれんの?」

「うん…ちょっとならね」

 妻が優しい声色で応えれば、夫は細い目を見開いて嬉しそうに笑う。

「マジか……ほな寄り道や、ゴム買わな」

「明日でもええやん、自宅に戻る時」

「それもそうか…」

「ストックは?」

「ちょうど切らしてんねん……いや、あの…オナニーにな、使うてん…」

 自慰行為にスキンを消費するということは器具を使用したということか、秋花は事態を飲み込むと

「オナホールにゴム使うたんか…ふふっ…エッチやのに真面目、」

と明け透けに夫を褒めそやした。

「いや、繰り返し使いたいし…いや、うん、せやろ、真面目な仕事人よ」

「うん……そういうとこも愛してる、シンタローさん」


 信号待ちで軽く振り向いた車崎の骨張った頬を息子にするようにつんつんと突つけば、

「評価ポイントがおかしないか?」

と夫は前を向き直し間抜けな顔でミラーを覗く。


 正面の信号が青に変わり車列が進み始めて、秋花が

「安全運転で頼んます」

としっとり伝えると、夫は

「もちろんよ、シューカ♡」

とコアラの様に愛らしく笑った。



おしまい






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