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7日目
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しおりを挟む「どやろ……おんなじかな、」
光沢のある淡いピンク、資料通りに器用に測り混ぜ合わせて調色すればその可愛らしさに秋花の口元が綻んだ。
「それ、可愛い色やな」
「!」
幸希を見送った車崎が後ろから秋花の手元を覗き、
「秋桜っぽいな。こういう色、好きか?シューカ」
と尋ねる。
「可愛い色や思いますよ」
「髪色、これにする?ひゃはは」
「んー…カラーはまんまり保たへんからなぁ…」
「ほなさぁ、シューカ、」
車崎はくるくると塗料の缶を混ぜる秋花の耳元に唇を寄せて、
「次にパンティ買うときはこの色にしよ、」
と囁いて歯を見せて笑った。
「……パンツを『パンティ』って言う男はモテへんっすよ」
「え、そうなん?アカンか?」
「エロオヤジみたいなイメージやなぁ…」
「そらアカンな……買うたら着てくれる?」
「可愛がってくれるなら、」
「そら可愛がるがな…あ、お客様来たわ、ほな!約束な!」
勝手な約束を取り付けて、車崎は作業場を駆け抜け駐車場の大型セダンの側へと寄る。
高齢の男性客と談笑を始めキーを受け取り、待合室へと案内するその姿勢はどこか在りし日の父を彷彿とさせた。
「(私、世に言うところのファザコンなんやろな)」
命日も13回目を過ぎれば滅多に思い出すことなんて無いのに、ふとチラつくのは法事からこっち数日でキッカケになることが多かったからだろうか。
飾り立てた車の整備、ロングドライブ、ミズモリ再興の話、去り行く車崎の背中。
秋花は出来上がった塗料のバケツを抱えて傷を負った軽自動車の傍らへしゃがみ込んだ。
目立たない箇所の傷へちょんと載せて確認すれば違和感ない色味、一安心の秋花は次々とピンクを拡げて自動車を元々の姿へ戻してやる。
「秋の花ね、」
あまり付けることが無かったがピンク系のアイカラーも試してみようかしら、秋花は柄になくワクワクして乙女の顔ではにかんだ。
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2021.08.13


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