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安全第一
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しおりを挟む駐車場へ戻る道中は楽しげに、二人は何でもないテレビや車の話で盛り上がる。
友人であり先輩である車崎は優しいし気が合うし、時折奢ってくれるし様々な点で秋花は助かっている。
彼女は彼に特別な感情など抱いたことは無いしむしろそんな目で見ること自体が失礼、時期が来れば合コンでもして結婚して子供を産んで…とぼんやり未来図を描いていた…それなのに。
「シューカ……付き合わへんか?」
会話が途切れた後で、咳払いをした車崎が突然そう言うものだから、秋花は本心から
「いいっすよ?どこへ?」
と応えてしまった。
「………そういうの要らんねん、」
「なに、つき…あ…は?」
「男女交際…せぇへんか?って…言うてんねん」
街灯に照らされた車崎は仏頂面で、しかし恥ずかしそうに口を尖らせる。
「は、ぁ、……あ?なんで?」
「なんでて…俺お前のこと好きやから。女として見てるよ…今日誘うたんはたまたま…弱ってんのが見てられへんかったからやけど…また合コン行くなんて聞いたら…今日言わなアカン思うて」
「はぁ?シンタローさん…マジすか…趣味悪…」
「好き」も「可愛い」も確かに普段から伝えてくれていたがそういう意味合いに捉えたことが無かった。
鈍感すぎる自分に呆れ、しかして期待に応える力は無いと自虐した。
「黙れ、なんでやねん……アカンか?」
「いえ、あの………考えたことあれへんかったな…」
「お試ししてみるか?1週間くらい」
車崎は人差し指をぴっと立てて提案する。
普段よりもう少し会話や連絡の頻度を上げて相手を意識して、特別な何かが生まれれば彼としては儲け物だった。
「漫画やあるまいし……え、本気?」
「本気やん…お前昔から可愛いもん。好きや」
「え、あ、えと…え、」
「お前さっき『ええ』言うたやん。あかんかったら別れよ、な、ええやん」
「は、ぁ、んー…わ、かった…」
じわじわと気持ちは昂るものの案外冷静だが、「具体的に何をすれば良いのだろうか」と思いを巡らせる。
「シューカ、好きやで。手ぇ繋いでええ?」
「いや、まだ早いっすわ」
「ガード堅いなぁ、ひゃはは、」
ともあれ1週間、二人はお試し交際を開始した。
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