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6日目(夜)
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しおりを挟む車崎がドラッグストアに入ってしまってから、秋花はティッシュで鼻をかみ、ふぅと後悔のため息を吐いた。
「はぁ…挑発してもうた……抱かずに説教もあるかも…」
嫉妬と寂しさと独占欲と性欲と、満たすために彼を振り回してワガママを言った。
車崎から抱くように仕向けた、狡猾で健かな自分が情けなくもある。
しかしもう止められない、希望も不満も言ってしまった。
あとは慰めるように不安を取り払うように仕置きするように抱いてもらう他無い。
数分後、ビニール袋を提げた車崎が戻って来て、乗り込むなり袋からドリンク剤を取り出して秋花へ手渡し、室内灯をパチンと灯す。
「お待たせ……シューカ、これコピーと商品名読んで」
「はい?なに………根本から強く…さ、」
「読んで、」
「さ、先まで…熱く…」
「うん、」
「お、男の自信と…みなぎるパワー、『ぜつりんぼうZ』…シンタローさん、」
「うん、開けて」
それは比較的即効性の高いドリンクタイプの慈養強壮剤、いわば精力剤であった。
「ほい、飲まして」
「ハ、イ、」
口元まで瓶を持っていけば男は薄目で秋花をじぃと見つめ、ぐびぐびと喉仏を動かして胃へ収める。
「かー……くるね…」
「え、しんどいですか?吐く…」
「ちゃう、体が熱くなってんのよ、シューカ、」
「あ、」
「メシはルームサービスでもええか?勃起した俺について歩ける?」
「いや、」
もう効いてるの?恐くてどんな具合かも見れないが秋花は黙って頷いた。
口を拭いた車崎は明かりを消し、顔を上へ反らせて唇を触り
「ん、シューカ、ん、」
と催促する。
「なんすか」
「キスせぇよ、ちゃんと誘え」
「はぁ?」
「今夜はお前から誘ってんねんからな。俺に抱いてもらえるように…誘えよ。お前が下の立場やぞ」
男は偉そうな物言いをして、文字通り上から言葉を投げつけた。
もう秋花のご機嫌をとっているばかりの車崎ではない。
彼女を5回抱き昇天までさせた経験はパートナーとしての大いな自信となっているのだ。
そして今夜は彼にとっては謂れのない秋花からの言いがかり、しないと言っているのに浮気を疑われるという不名誉な扱いをされて完全に彼の中での立場は逆転していた。
「は………シンタローさん、ん♡」
「ん、」
頬に手を添えて唇を喰み、秋花が
「ホテル…行きませんか?」
と濁して誘うものの、車崎は
「行ってなにすんねんな」
と突き放す。
秋花はぐぬぬと拳を握りしめるが、じきにしおらしく
「だ、抱いて…欲しいんです…」
と消え入りそうな声で告げると、運転席の男はぶふと吹き出した。
「……………ひゃはは、ええザマやの、シューカ♡あぁ?寂しいか、よしよしして欲しいんか、乙女やのぅ、」
「…腹立つ」
「あ?欲しいの、シンタローくんのち◯ぽ欲しいんか?あ?」
「…欲しい」
「ひゃは、おしおし、ええ女やな、ん、行こう」
一頻り笑って揶揄って、車崎は機嫌良く目的地のホテルまで車を走らせる。
「シューカ、さっきのな、ドリンク。飲んで効果出るのに1時間くらいかかるみたいでな、それまでにメシ食お」
「ルームサービスか…美味いんかな」
「冷食ならそれなりちゃう?あ、ドライブスルーにしよか。メシ食って、風呂入って、んー…一昨日もホテル行ったのにな、ハイペースやなぁ…ド助平シューカ♡」
もう何も言うまい、実際にいやらしい気持ちに歯止めが効かないのだから仕方ない。
秋花はコアラの口になり黙ったままファーストフード店を経由しホテルまで運ばれた。
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