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3日目
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しおりを挟む3日目。
この日は車崎は予定通り休みで、秋花はひとり休憩室で昼食を摂っていた。
客対応などで皆食べる時間は差があって、交際しているからといってそもそも車崎と時間を合わせる気も無いのだが、この建物内に彼が居ないと思えば心がしぃんと寂しさを訴えてくる。
「(普段から…何かと声かけてくれてるからな…)」
黙々と食べ進めていると、
「あ、秋花ちゃん、」
と事務の清洲遥が彼女を見つけるなり声を掛けて来たので隣の椅子を引いてやった。
「ん、」
「ありがとー…いただきます、」
遥は女の子らしい小さな弁当箱を巾着から取り出して、ちょんと両手を合わせる。
「え、遥、メシそれだけ?」
「うん、食欲無くって…」
ぱかと開ければ中はレタスとブロッコリーだけ、遥はドレッシングなど何も掛けずちびちびとサラダを啄みだす。
「はぁ?なに、元気無いな、」
「ん…彼氏に連絡つかないの…忙しい人だから心配で…」
「はぁ、そら大変…え、いつから付き合うてんの?」
「んー、3日前?合コンでね、デートしてぇ…翌日からぱったり…」
玉の輿を狙う彼女は数日前にできたばかりの証券マンの彼氏と連絡が途絶え、心配でげっそりとしていた。
「へぇ…」
それは逃げられたのでは?そう尋ねてみたかったが彼女のあまりの憔悴ぶりに言葉が出ない。
「風邪でもひいたのかな…ずっとマスクしてたし…さすがに、ホテルでは外してくれたけどぉ♡」
「顔隠してんのは怪しない?」
「でもイケメンだったよぉ♡」
「へぇ…」
それで行方知れずではやはり怪しいのでは…しかし恋愛経験の未熟な自分に諭されても不愉快かと、秋花はやはり黙って食べ進めた。
「このままだと最悪、職場に突撃しちゃう…秋花ちゃんは?最近恋愛はどうなの?」
「ん?んー……ん…」
車崎と交際中ではあるがあくまで「お試し」だし、結果によっては気まずい思いをするかもしれない。
もごもごと濁して、弁当の残りを一気に口へ流し込んだ。
「あ、怪しい、教えてよ、ねぇ、喉詰まるよ、秋花ちゃん、」
「ムグ、ん、ごちそうさま、よーし、インナー着替えてこよっと、じゃ、」
秋花はサッと蓋をした弁当箱を包み直して席を立つ。
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