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しおりを挟むアパートに着くと、玄関先で時也が俺の帰りを待っていた。
蛍光灯に照らされる丸まった背中、主人を待つ忠犬みたいだ。
そして俺を見るなり、
「寺西と、何してたの?」
とジト目で睨む。
「…何も?言ったろ、図書館に寄るって」
「…浮気とか」
「するかよ…ゲイはそんなに周りに居ないと思うぞ」
「そうかな?僕みたいに、ノーマルから鞍替えする人もいるかもよ」
「確かにな、でも違うし、浮気はしない」
手を伸ばして頭をポンポン叩いて、玄関を開ける。
「お邪魔します」
時也は当たり前に入って来て、定位置に座り込んだ。
「……」
「…疑っちゃうな」
「気にしすぎ…お前って、恋すると依存タイプなのな」
「そうかも…前もそうだったし」
「恋はしても良いけど、慕わなくて良いからな?俺に尽くしたりとか、そういうのは求めてない」
あくまで対等な仲だと改めて伝えたつもりだが、時也はハッとした表情になる。
「…僕、自然と従えられる気持ちになってた。こわ、下僕メンタル、こわ!」
「あ、そう…性分なんだな、別に…そりゃ、エッチは俺がする方だけど…上に立つつもりは無い。リードはするかもだけど…従えたくはない」
「ちょっと乱暴とかはする?」
「盛り上がったら…ハードなことするかもな、時也が望むなら。でも誘発する行動はするなよ、わざと怒らせたりとか。言いたいことは伝えてくれ。あ、エッチに限らずな、普段でもな」
「うん」
微笑み合って頷き合って、さて夕飯の算段でも付けようかと冷蔵庫へ目を遣った。
ひとりなら白米と冷凍唐揚げで済まそうかな、なんて怠惰メシの構想を膨らませる。
「時也、メシは帰って食う?」
「…買って来て、ここで食べちゃダメ?」
「良いよ、コンビニ行こうか」
「うん」
スニーカーを履いて、暗がりの中を歩く。
大きな県道沿いだから街灯も途切れない、すぐだから手も繋がない。
「純希は何にする?」
「おろし竜田揚げ弁当があればそれにする」
「スタミナ付くやつ、あれば良いな。早めに回復したいから」
「…まだ回復してないのか?」
この辺は若さゆえかな、年相応のエロ話をする感覚でニマニマ笑い合う。
「ううん、さすがに回復してるけど。慈養強壮だよ、持続的な、ってこと。触って、抜いてもらいたいから。純希のも早く回復してもらいたい」
「泊まる気?俺は、一晩で3発くらい余裕だけど」
「…頼もしー」
やんややんや言いながら弁当を選び、それぞれに目当ての物が買えた。
時也はニラ玉弁当と豚カルビ弁当を贅沢買いし、るんるんとコンビニを後にする。
そして家に着けばもりもり食って、
「先にお風呂するね」
なんてセクシーに浴室へと篭ってしまった。
さてガタイの良い時也を組み伏せるのは簡単ではない、俺もガツガツ平らげてサッと腰を上げる。
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