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しおりを挟む「楽しかったね」
「そだな」
日帰り旅行と言いつつも土壇場で終電を逃してカラオケで一夜を明かし、俺たちは翌日の午前で帰路に着いた。
学生らしい遊び方だったろう、予測はついていたのでバイトを入れておらず助かった。
電車でそれぞれ順次解散していき、一番遠くまで乗る俺は皆を見送った。
何駅か手前で降りるはずの広瀬は何故か乗り過ごして、しれっと旅行の思い出を語り出す。
「ミカン味も食べておけば良かったよね」
「そだな」
「日持ちするならお土産に配るのにね」
「そだな」
示し合わせてないがうちに来るのかな、本当に元通りになった関係が嬉しくもあり虚しくもある。
こいつは俺の気持ちを分かっていながらホイホイと部屋に来るんだ、俺がどんな思いで辛抱してるかも知らずに。
「(帰ったら、思い出をオカズに1発抜こうと思ってたのになー…)」
そして寝直そうと思っていたのにな、まぁ広瀬がいるなら昼飯を食べに出ても良いかもしれないが。
「純希、部屋に行っても良い?」
「あ?いーよ、そうなんだろうと思ってた」
「うん…」
「…なんか、また話でもあんの?」
「そういうんじゃないよ、離れてた分を埋め合わせてるだけ」
そんな恋人みたいなことを言うなよ、まるで男女のそれみたいじゃないか。
押していたのを辞めたらそっちが押して来るのか、にわかに心がソワソワし出す。
俺は言葉を重ねることが出来ず、降車駅へと到着した。
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