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 数日後、旅行日。

「純希って、広瀬っちのこと好きなん?」

移動中の電車の中で、仲間のうちのひとり、寺西てらにしがそう尋ねる。

「…そう見える?」

「うん。そういう痴情のモツレで離れてたのかと思ってた。で、元サヤで合流したのかと」

「…あながち、間違いでもないかな」

「そっか…まぁ、今が円満なら良いよ。周りも気まずかったしさ」

「ごめん…なぁ、俺って、分かりやすかった?広瀬への気持ち」

 多少の照れでそう聞けば寺西は「うん」と答えて、それ以降はこの話題は出なかった。

「(他のみんなも、分かってたのかな…俺が広瀬のこと好きって…特別仲良かったもんな、部屋を行き来したり…そっか…)」

 俺が「女に興味が無い」ことは友人たちに周知されている。

 だからといって「男に興味がある」に安直に繋げないところが、今どきというか多様性への理解というのか。

 寺西は勘付きながらも触れずにいてくれたんだな、人を好きになることはそれだけはやし立ててはいけない尊いことなのだ。

 俺は良い友人を持ったなぁと、車窓の景色に目を遣る。


 小旅行はつつがなく進み、俺も広瀬も普通に楽しんだ。

 周囲は前より少し固い感じで、俺たちの顔色を窺っているように感じた。

 俺はそれぞれと2人きりになったタイミングで「仲直りしてるから気遣いしなくて良いよ」などと言い、次第に皆は以前のように柔らかくほぐれていった。

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