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「…広瀬、もし…クソ女に疲れたら、俺んとこ来いよ。羞恥で虐めるなんてことはしねぇけど…可愛がってやれるから…広瀬が気持ち良いかどうかは分かんねぇし、痛いこともあるだろうけど」

「…純希とエッチして、すごい…恥ずかしくて、それが気持ち良かった。でも、ごめん…意志が弱くて、ごめん…春妃さんの反応を考えて、興奮したんだ…きっと怒られるな、って。だから…ごめん、恋愛感情とか、もう、僕に伝えないで、勝手でごめん、今日も…こんなこと頼んでごめん、疎遠になっても良い、ごめん、純希の気持ちには応えられない」


 ぽろぽろと涙を流す広瀬を眺めて、ひゅうと興奮が去って行くのが分かる。

 どうやったって支配には勝てなかったか、片想い歴は俺の方が長いのに。

 広瀬は愛されるよりも愛したいたちなんだな、らしくて好きだけど…こんなに拒絶されると辛い。

「分かった…こっちこそごめん。ケツも…もし切れてたりしたら、治療費払うから。訴えないだけありがたい…悪かった、お前らの純粋な愛に水差してよ…」

 フラッと立ち上がり、スマートフォンだけ拾ってポケットに入れる。

「純希、」

「トイレでも風呂でも使って、キレイにして帰れよ。ちょっとコンビニ行って来るから…30分くらいかな、その間に帰ってくれ。鍵は下のポストで良いから」


 広瀬の応答を待たずに、サンダルを引っ掛けて玄関を出る。

 まだ夕方だ、徒歩1分のコンビニで30分も潰すのは難しい。

 仕方なく俺は1キロ先のスーパーまで歩いて、一番安い炭酸ジュースを買って河川敷に寄った。


「(そりゃ、嫌われるわなぁ…)」

 秘密を爆弾として抱えるのも楽しかろうに、それも拒まれてしまった。

 そもそもが男同士だし、広瀬は女が性対象な訳だし。

 信頼のおける親友がいきなり性欲剥き出しで襲って来たら恐いだろう、当たり前だ。

 当然の心理を「広瀬がマゾだ」という事実だけで割り切ろうとした、俺が単純過ぎたのだ。

「(でも、今日も来たじゃんか…掘られる覚悟もあったんじゃ…ねぇの?)」

 だって既に一度はヤッちゃってる、2日前に繋がったばかりだ。

 罰する気は無いって言っていたし、即刻関係を断つ気は無かったことも態度から分かってる。

 だから今日の延命行為みたいなのは何なんだよ、期待させやがって。

 俺は広瀬とは違うから、舐められたら順当にイラつくんだ。

 感情と欲求が爆発して犯した、あれを罰しないなら甘んじて受け入れ続けろよ。

 そして性奴隷みたいに俺の好きなように…

「それじゃ、クソ女と同じか」

ふと浮かんだ危険思想を、腹に流し込む。


 土手でぼんやり過ごすこと20分ほど、もう良いだろうと自宅アパートへ帰ることにした。
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