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しおりを挟む広瀬はカノジョのことをSと言うが、俺にしてみれば広瀬がMなのだ。
カノジョに限らず、広瀬は人の下に居たがる。
虐げられるとまではいかないが、広瀬はこれまでもそういう立ち位置で学生生活を送ってきた。
イジられ役、がしっくり来るか、きっとイジメとかではなかった。
不味いと話題の菓子を最初に試食させられたり、アミューズメント施設の高所アスレチックで「まず行って」と先陣を押し付けられたり。
広瀬はヘラヘラと笑ってやり過ごしていたが、終始嫌な顔はしない。
一度「嫌なら反抗しろよ」と進言したことがあるのだが、「なんで?皆が楽しんでるし、僕も楽しいよ」と返ってきた。
なので俺は、広瀬はそういう性分なのだろうと考えていた。
人の下に甘んじる、いやむしろ望んで受け入れているのだろうと。
しかし、広瀬は自主的にマゾを発揮するわけではない。
自分から損な役回りを買って出たりはしないし、あくまで委ねられれば受け入れるという形だ。
なので今回の尻の件も、広瀬が自分から突っ込んだわけではないと踏んでいる。
そのSっ気の強いカノジョが挿れさせた、そういうことだろう。
「ふーん?でも生活に支障をきたしてんじゃん。授業中はどうしてた?」
「前のめりになったり、教科書置いて座面に接地しないようにしてた…」
「それ、楽しいの?」
「楽しいとかじゃ……いや、まぁ…ほ、褒めてもらえるし」
見事な主従関係だな、広瀬は褒章のために無駄な苦労をしている。
もし俺が何か弱みを握られて広瀬と同じ立場になったとしても、「1日中ハメてました」と嘘をつくだろう。
主人が見てない所でなら、従者は言いつけに背いたってバレないのだから。
トイレだって困るだろうし、見た目にも張り出しているのが分かるし。
そういえば日中は長めの上着を羽織っていたから尻が隠れていたのか、今は脱いだから露呈したわけだ。
広瀬がそれを脱いだのは暑かったからなのか、俺にならバレても良いと思ったからなのか。
それとも、俺にバレるかどうかのスリルを味わっていたからなのか。
親友とはいえリアルな下の話はしたくないが、暴露しても揺らがない関係だと信用されているのなら喜ばしい。
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