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 それからひと月ほど、また俺の家で課題を片付けようと集まった日のこと。

 どうにも違和感が俺の思考を占拠した。

「…広瀬さぁ、それ…」

「え、な、何⁉︎」

広瀬は、俺の言葉に過剰にビクつく。


 俺が気になったのは広瀬の尻だ。

 カーペットの床に座るもソワソワと落ち着かず、前のめりになったり膝立ちになったりと動きが大きい。

 胡座あぐらで良いのに正座をして、ただでさえ高い座高を誇示しているみたいだ。

 足が痛いのかと思ったが、大学から家まで歩く間にそんな話は出なかった。

 ならば尻か、尻を床に付けられない理由でもあるのかと勘繰ったのだ。


「尻、痛いのか?クッション持って来ようか」

「あ、っと…お願い」

「ん。待ってて」

俺は立ち上がり、広瀬の後ろを通り部屋の隅のクローゼットへと向かう。

 チラと見た感じ、不自然にジーンズが突っ張っているような気がした。


「ほらよ」

 取り出した柔らかクッションを背中に押し付けると、広瀬はホッとした表情で振り返る。

「さんきゅ……な、何?」

「いーや?体調悪いのかと思って」

 視線を顔から下へと動かせば、広瀬はワタワタとクッションで尻を隠した。

 やはりソコなのか、俺は黙ってしゃがみ込み…不思議な出っ張りに触れてやった。


「…ッあ♡」

広瀬の聞いたことのない喘ぎ声に、俺も広瀬本人も驚いた。

「…これ、何か挿れてんの?ケツに」

「違う、」

「もしかしてカノジョ?お前らこういうプレイしてんの?」

「ちがう、春妃はるひさんはそんな…僕が、してるだけ、」

「はぁ」

 恋人を庇ったつもりだろうが、広瀬の変態性が上がっただけだ。

 オモチャか何かを尻に挿れて、スリルを味わっていたのか。

「あの…純希、誰にも言わない?」

「言えるかよ」

俺は芯からそう思ったので、そう応えた。


 軽く尻を浮かせた広瀬は、ぽつりぽつりと話し出す。

「春妃さんはさ、その…Sっ気が強いというか。僕に限らず、上に立ちたいみたいな…そういう人なんだよね」

「はぁ」

「それで、まぁ…オモチャみたいなやつを、その…挿れて、1日過ごしてみてって言われてて」

「それ、従う意味あるの?」

「意味とかじゃなくてさ、春妃さんが言うからその通りにするっていうか…そういうものじゃん」

 俺は呆れ顔で、軽く相槌を打つ。
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