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しおりを挟むそれから薫はハイスピードで夕飯を作り盛り付けて、いかにも腑に落ちないといった顔でリビングの座卓へと配膳した。
しばらくぶりの二人の今夜の食事は鶏の照り焼きと千切りレタスにスーパーのポテトサラダ。
薫は申し訳なさそうに茶碗を渡すも、聡太はうきうきと受け取って箸を取る。
「いただきまーす………うん、美味しいね」
「そりゃお惣菜だもん」
「こっちの鶏肉も美味しいよ、薫ちゃんは料理上手だよね」
「ありがと…」
何だろう針の筵か真綿で首を絞められる感じ。
やはり喉元のナイフは離れただけで横に待機しているだけなのではと薫は気持ち悪くて仕方ない。
騙して結婚を迫って半同棲してバレて…自分の行動が悪いことだと理解しているのだからいっそ厳しく罰して欲しいと思う。
しかし聡太はニコニコとご飯を頬張りおかわりまで求める。
抱き締められたしなぁなぁで許されるのか、それもそれでどうなの。
薫は混乱したまま何とか夕飯を食べ切った。
「ごちそうさま、コホン……あの、聡太くん…」
「薫ちゃん、まず、ごちそうさま」
「あ、うん、」
「それから、ごめん」
「……何が?」
いやが応にもキョトンとなる薫をフォローもせずに、聡太は口を拭いて足を崩す。
「色々。あのね、まず、そもそもの薫ちゃんの計画がダメだったことは当然なんだよね、前も言ったけどその不謹慎さとかに僕は嫌悪感があったよ」
「うん…ごめん」
「それで、あの時僕が薫ちゃんを信用出来なかったのは、『薫ちゃんが僕を好きになった』っていうのが信じられなかったからなんだよ。長年一緒の会社で働いたけどそんな実感無かったし、騙されたって知った後だったから余計に信じられなかった」
「うん…当然だよ…」
「薫ちゃんはすっぱり僕を諦めて引っ越しちゃうし…やっぱり僕への好意も嘘だったんだ、そう思った」
「……」
改めて告げられる自身の罪。
この後罰を受けるのかそれとも…薫は居心地悪そうに三角座りの素足を手で包む。
あの日泣いて伝えた聡太への好意は出まかせの言い訳にしか聞こえなかっただろう。
逆の立場ならきっと信じられない。
ただの同僚に戻ったのだろうか、だとしたら部屋に上がったり抱き締めたりの整合性が取れず聡太が軟派野郎になってしまう。
薫はモヤモヤとしつつ頷く。
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