21 / 73
3
21
しおりを挟む「薫ちゃん、あのさ、そろそろご両親にご挨拶に行かない?」
「え、」
「急いだ方が良いって言うからこうした訳だし。取り急ぎ顔だけでも見せて安心させてあげるってのはどうかな」
「あー、んー……あの、それなんだけど、今ちょっと…あ、会えない状態で」
「え⁉︎」
まさか容態悪化で入院でもしたのか、聡太は強い目力で薫を凝視した。
一方そんな彼にキュンとしつつも考えを巡らせる薫は、両親を殺さずしかし会わなくて済む方法があろうかと必死に脳を回転させる。
これは毎日考えていることなのだが、ひと月経った今でも最善策が浮かばないのだ。
「えーと、その」
「体調を崩されてるの?」
「いや、そんなんじゃなくて…あー…」
「もしかして、僕との結婚に反対されてるとか?」
「え」
そんなはずはない、母は薫のことを叱りはしたが聡太に対しては同情的な態度だった。
薫は聡太を貶めることなんて考えもしなかったのでそんな作戦は目から鱗。
しかしそれを肯定するほど恩知らずではない。
「違うの、あのー…んー…ち、父がね、」
「うん、」
「わ、私がお嫁に行っちゃうのが寂しいって…その、ヘソ曲げてて…す、すぐには会えそうにないっていうか…あは、あはは…」
こんな口から出まかせで聡太を騙せるのか。
しかし純な彼は
「そっか…大切なひとり娘だもんね…複雑な父心だね」
と鵜呑みにしてしまった。
「(セーフ、セーフ‼︎)」
「お父さんの気が変わったら教えてね」
「う、うん…ごめんね、あはは…」
心苦しい、気遣いを無碍にして申し訳ない。
言いたいことは沢山あるのだが薫は自分の保身をまず優先してしまう。
さっさと白状して聡太の許しを得られたら最良だが可能性は低い。
塩対応どころか無愛想にも思えるツンツンぶりでは恋人だとしてもイラついて不思議ない。
それでももう少しこの新婚気分を味わっておきたいの、全てが明るみになる前に…彼女は今朝も何食わぬ顔で食器を片付け、「行ってらっしゃい」と聡太を送り出すのだった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる