7 / 73
1
7
しおりを挟むこの強気でクールな女が荒唐無稽なお願い事をして涙を見せるのか。
さすがに聡太は酔いも覚めてきたが今ひとつこれが現実のことに思えない。
何事もシャキシャキ片付ける事務の鬼とぶっ飛んだ提案。
何かのドッキリか、そんなことある訳無いと思いながらも落ちの多い計画が逆に切迫度を感じさせる。
ならば折衷案ならどうだろう、
「あのさぁ……その…お試しというか…同棲、から始めてさ、ご両親に挨拶してさ、しばらくそれで過ごして…期限を設けてね、例えば1年とか…入籍しないことを不審がられたらそこで婚姻届を出すとかさ、その…段階を経ようよ」
と言うと
「…それなら良い?」
薫の目に溜まった涙は落ちそうで落ちない。
外灯の光を反射してふるふる揺れた。
「うーん、良くはないんだけどさ、いきなり結婚ってのがやっぱおかしいよ」
「良いのね?」
「いや、」
「男に二言は無いよね」
「僕、そんなに男らしさを推して生きてないんだけど」
さて初めから勝算があったのか、薫の目からはすんと涙が引いてキラキラ輝いていた。
それどころかもう笑っている。
人は追い込まれると逆に笑ってしまうのだろうかと聡太は呆気に取られため息を吐いた。
「まずは住む所を決めよ、私のアパートにする?」
「いきなり?」
「うん、親睦を深めなきゃ。演技だけじゃボロがでるんでしょ?」
「うーん…とりあえず…そうしようか…」
「生活基盤が出来たら式場の下見かな」
「待ってよ、まずご両親に挨拶でしょ」
「あ、そっか、ふふっ」
暗がりに浮かび上がる薫の笑顔のチャーミングなこと、聡太は初めて見たその表情に心を掴まれる。
「(単純だな…僕…)」
少なからず自分を求めてくれる相手だとこんなにも可愛く見えるものなのか。
『異性』としてのフィルターを透かした薫はそれなりに魅力的に映った。
「じゃ、帰ろっか」
「うん…」
「あー、良かったぁ…」
「(ゴキゲンだねぇ…)」
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
【短編】愛することはないと、嫁ぎ先で塔に閉じ込められた。さあ。飛ぼう!
サバゴロ
恋愛
十年続いた戦争が終わり、和平の証として、両国の王子と王女が結婚することに。終戦の喜びもあり結婚式は盛大。しかし、王女の国の者が帰国すると、「あんたの国に夫は殺された」と召し使いは泣きながら王女に水をかけた。頼りの結婚相手である王子は、「そなたを愛することはない」と塔に閉じ込めてしまう。これは王女が幸せになるまでの恋物語。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる