ライアー・ブライド…真面目な僕らの偽装結婚

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
69 / 73
10

69

しおりを挟む

 ひと月後。

「聡太くん!久しぶり!」

新居にて再会した薫は、気合の入ったメイクで以前に増して凛々しくなっていた。


「薫ちゃん、お化粧戻したの?」

「うん、やっぱりガッツリした方が戦闘モードに入れるっていうか」

「…ナチュラルなのも好きだけどなぁ」

「……そう?」

「うん…まぁ良いや。これ鍵ね、」

聡太の荷物は引き渡し日に移動済み、薫の車からいくつか箱を降ろしては地面へ積んでいく。

 今日は宅配便で薫の荷物を受け取って運び入れて家電・家具の配送に立ち会ってと聡太は朝からフル稼働している。

 そこに薫が加わって引っ越しが完了、あとはぼちぼち荷解きなどしながら生活様式を整えていくだけだ。


「良いね、内見の写真より広く見える」

「そう?良かった…あ、運転疲れたでしょ、何か飲もう。ジュース買ってあるんだ」

「ありがとー」

 オレンジジュースを受け取りクピクピ喉へ流し込み、半分ほど空にした薫は「あ、」と飲み口から唇を離す。

「ねぇ聡太くん、さっき会社に挨拶して来たんだけどさ、会った人が皆妙にニコニコしてたんだけど…まだ言ってないよね?」


 腰を据えたら外出が億劫になるだろうと先に済ませた職場復帰挨拶、薫はそこでスタッフの自分を見る目に違和感を覚えていた。

 以前と同じかさらに強めなメイク、態度も対応も変わっていないというのに皆が異様に優しかったのだ。

 まだ結婚どころか聡太との交際さえも緘口令かんこうれいを敷いて秘密を守っているというのに何なのだろう。

 以前の薫なら「ニタニタしないで下さい」と吐いてしまいそうなくらいに生温かい歓迎を受けた。


「へぇー、皆薫ちゃんとの再会が嬉しいんだよ」

「いやいや、私そんな歓迎されるキャラじゃないの。めちゃくちゃ素っ気なく去ったのに。なんか『お帰り、ふふ』みたいな…なんか皆笑ってたの。そんなに皆と触れ合うキャラでやって来てないの、知ってるでしょ?会う人会う人、これまで特に接してないスタッフもなんか微笑ましく見てくるっていうか…ねぇ、私たちの関係、まだ誰にも言ってないよね?」

「うん。手続き上店長には話したけど」

「店長はおめでとうってこっそり言ってくださったけど、なんか変な感じしたんだよね」

「だから、薫ちゃんの帰還を喜んでるんじゃない………さ、片付けよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

一夜の男

詩織
恋愛
ドラマとかの出来事かと思ってた。 まさか自分にもこんなことが起きるとは... そして相手の顔を見ることなく逃げたので、知ってる人かも全く知らない人かもわからない。

闘う二人の新婚初夜

宵の月
恋愛
   完結投稿。両片思いの拗らせ夫婦が、無意味に内なる己と闘うお話です。  メインサイトで短編形式で投稿していた作品を、リクエスト分も含めて前編・後編で投稿いたします。

処理中です...