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しおりを挟む「このクッションなら腰も平気そうだよ」
「そう」
風呂に入って寝る支度をして、本当に聡太は床で寝ようとするので薫は不機嫌より不信感が態度に表れる。
「(せっかく来たんだからエッチしても良いのに…私、気持ち良くなかったのかな…)」
真面目だ不真面目だの問答は一通り済ませたのだしひとつ屋根の下で隣に異性が居れば手を出すものじゃないのか。
それとも長旅の疲れが出ているのか。
自らのホームに飛び込んで来た愛しの男性、薫は明かりを消しても横にならずにベッドに座ったままそこに寝ているだろうその人にテレパシーを送った。
「(聡太くーん…触りたくないのー?拒まないよー………なんてね、)」
馬鹿げている、遠回しな誘いに嘘に誤魔化しで作って壊した関係をさらに再構築してもらえたのに可愛げのないアピールしか出来ない。
薫は諦めて、音を立てぬよう寝る体勢に入る。
すると暗闇から
「薫ちゃん」
の声、「ひゃん」と驚いた薫は倒しかけた体を起こした。
「な、なに?」
「ごめん、ここさ、エアコンの風がモロに当たるんだ。風向き調整出来るかな」
「あ、うん…待ってね、明かり点ける…」
「それかさ、」
「うん?」
暗さに慣れた視界を覆う大きな影。
のっそり立ち上がった聡太のその人影がゆらり近付く。
「……」
「薫ちゃん、僕もやっぱりこっちで寝て良いかな」
「…うん…どうぞ…」
テレパシーって本当に届くんだ、そんな訳はないと思いつつも薫は尻を浮かせて壁際へと寄せる。
ギシと音を立てて沈むマットレス 、重量的にはオーバーしないだろうが初めて耳にする軋みが心配ではある。
「風、当たらない?」
「うん…大丈夫そう」
「良かった」
シングルベッドにギチギチに収まる二人の体は当然触れ合っていて、下手に動けば誘ってると思われるかなと薫は指先にまで集中してガチと固まった。
けれど手の甲にゴツゴツした彼のそれが当たる。
1秒後には柔らかい手の平同士が触れ合って腕ごと絡まる。
肩、腕、反対側の二の腕を掴む大きな手…薫は聡太に半ば下敷きになる形で抱き枕にされた。
「そ、聡太くん?」
「ごめん…良い匂いするから…僕、寝床に物があるとこうして抱いちゃうんだ」
「それは知ってる。…だから、最初からベッドで寝れば良かったじゃない」
「一応、真面目なところアピールしたかったんだ」
「人の手帳見ちゃう人は真面目じゃないよ」
聡太は「そうだね」と笑ってくんくん髪の香りを嗅いだりむにむに腹を触ったりして、心臓が爆発しそうな薫をよそに数分後には眠ってしまった。
おあずけされた感が何とも恥ずかしい薫は包まれる感触に興奮してしまって、けれど聡太の寝息を頬に受けているうちにすうっと意識が飛んだ。
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