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しおりを挟む「……」
「美味しい?聡太くん」
「うん、美味しい」
「良かった」
今夜の夕飯は夏らしく素麺、数種類の薬味をたっぷり揃えた彩りある食卓だった。
望地家から伝授されたのだろう好物の梅酢も用意してある。
聡太はそれをちょんと足してオクラを混ぜて、景気良くズルズル啜る。
しかしやはりどこか物憂げで落ち着かない感じ、薫も当然気付いており何か不手際があったかと気を揉む。
「聡太くん何か調子悪い?ボーッとしてる」
「あ、そんなことない…つ、いや、何でもないよ」
「疲れてる」なんて言えば昨夜のことを指してるみたいでラブな空気になってしまうかもしれない。
少なくとも食事中は不要なことだと聡太は言い澱んだ。
「そう…」
薫は今日は一日この自宅で過ごし、少しでも聡太の身になるように夕飯を考えてひとりで拵えた。
聡太の母から仕入れたレシピから彼の好物を再現して披露、そこそこの反応しか貰えなかったが不味くないなら上出来であった。
「(でも聡太くん変な感じ……私、何かしたかな…)」
朝は照れ臭さから黙って自宅へ戻ってしまったがもしやそれが良くなかったか。
それともアラサー乙女の体はおかわりも望まぬほど美味しくなかったろうか。
しっとり愛し合ったつもりだったが不細工だったか、もっとこちらから奉仕などすべきだったのだろうか。
ぐじぐじ考えても答えは出ない。
こんな時の薫の解決法はひとつ、
「聡太くん、私、何か悪いことした?明らかに昨日と態度が違うんだけど」
と、ズバリ突き付けることだった。
「え、そんなことない、よ、」
「嘘、足りないところがあるなら教えてくれなきゃ改善できない」
「違う、薫ちゃんのことじゃないよ」
「個人的なことでも相談して欲しい、出来ないなら周りに悟らせるくらい表情に出さないでよ」
「……んー…」
言って良いのか。
他ならぬ薫のことだから相談せねばならないが非の無いこちらを責める言い方に聡太は多少はカチンと来る。
勘違いでも証拠を出して貰わねば納得できないし兄がいるなら隠した理由をはっきりさせねばならない。
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