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しおりを挟む「お邪魔しまーす…」
Tシャツの腹を搔き掻き薫宅の玄関を開ければ、
「おはよう、聡太くん」
といつもと変わらぬ彼女がエプロンを外して畳んでいるところだった。
「おはよう」
「ちょうど出来たとこ。食べよ」
「うん」
慣れた部屋、慣れた食器。
しかし愛を交わした翌日ということもあり聡太の目には何もかもが新鮮に映る。
「美味しいね」と褒めれば「ありがとう」といつもの返事があるが薫はどこかほんのり色っぽくて、語尾にハートマークでも付けて発していそうな気さえした。
「(ゴキゲンだ…)」
普通ならその理由は体が結ばれて気恥ずかしくてもじもじしているで間違いない。
しかし兄の存在を半端に知ってしまった聡太はそこにも何か裏があるのではと疑ってしまう。
ここからデレ期に入って重要な秘密を持つ清水家に取り込まれてトラブルになったりして。
聡太はあまりオカルトや陰謀論などは信じない質だが、家督乗っ取りとかはたまた異星人だとかおかしな方向にまで考えが及んでしまった。
「今日は…何か用事ある?」
「あ、えーと…」
特に何も予定などは無い、本来なら愛し合った薫とさらに親密になっても良いと思うのだが当然ながら聡太は気が乗らない。
適当に架空の予定を作り日中は家を空けることにした。
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