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しおりを挟むそして翌朝。
「……ぅゎ」
薫が目覚めると、まるでぬいぐるみを抱えるように抱き枕を抱くように、要は聡太が自身がしっくり来る体勢で彼女を抱き締めて寝息を立てていた。
仰向けの薫の顳顬に鼻を付けてすんすん匂いを嗅いで、これは生理的なものなのだろう股間を彼女の腰にぐにぐに押し付けては「むにゃ」といかにもな寝言を呟く。
薫はそのまま動かずにまた目を閉じて、聡太が自力で目覚めるのを待った。
「もぉ…呑めない…うん…うん………あ、あ!」
「起きた?おはよ」
「おはよ、じゃなくて…あ、え?」
聡太が目を開けると同時に薫はさっと顔を背けて彼の腕を鎖骨の上から退かして、
「夢じゃないよ」
と化粧ポーチを持って部屋を出て行く。
トントンと階段を降りて行く音、「おはようございます」と愛想良く母へ挨拶する薫の声。
二日酔いの聡太の頭には昨夜のことがフィルムのようにグルグルと再生された。
「そっか……なんか受け入れちゃったんだな…」
温かくて柔らかい感触が手と体に残る。
密着していた股間だってスースーと孤独を感じてなんだか寂しい。
クセというか隣に物を置いていると布団でも座布団でも抱きかかえてしまうのだ。
こうなることはなんとなく予測できたのに説明も億劫でそのままにしてしまった。
しばらく布団の中で寝そべっていると薫が戻って来て、
「望地くん、お母さんが朝ごはんは自由に食べてね、って。お腹空いてる?」
と仕事中と同じフルメイクで聡太を覗き込んだ。
「…空いてない…清水さんは食べて良いよ」
「ううん、望地くんは今日お休みなんだよね?私は遅番だから、今後の話を少ししてからお暇しようかな」
「あ、そう…」
さすがに聡太も起き上がって時計を見れば9時過ぎ、彼らの店舗の遅番は12時始業なので出勤時間には余裕がありそうだ。
「じゃあ望地くん…まずね、」
「うん」
そこからの話は薫の独壇場、引っ越し時期から必要書類から会社への手続きから、何から何まで事細かに書かれたノートをもとにスケジュールが組まれていった。
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