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「ここだよ…そこ寄せて……じゃあ、ありがと…ん?」
「ご両親、まだ起きてらっしゃるの?」
家の真ん前に停めた車から明かりの点いた沿道の1階を見て、薫はパーキングブレーキを踏み何故かエンジンを切る。
もう日付が替わる頃だが、微かにテレビの色とりどりな画面がレースカーテンから透けていた。
「撮り溜めたテレビとか夜更かしして観てんだよ」
「お若いね」
「いや?そこまでじゃ…んー…今年57とかそれくらい」
「ふーん…ねぇ、ご挨拶しても良い?」
「は?さすがにそれは」
いきなりだし初訪問がこんな夜更けでは非常識が過ぎる。
両親はともかく薫の評判が悪くなるだろうと聡太は首を横に振る。
しかしさっさと降りた薫は玄関へと向かい、チャイムも押さず古い扉をガラガラと開けてしまった。
「ちょい、清水さん!」
「こんばんはー、夜分に失礼しますー、」
追い付いた聡太が慌てて玄関から外に出そうとするも、
「なに、聡太?………あらら、べっぴんさん連れて…」
とベロンベロンの聡太父がリビングから這って顔を覗かせる。
「親父、何でもな」
「あの!聡太さんとお付き合いしてます、清水薫と申します。夜分に失礼と思ったのですが、聡太さんが是非に紹介したいとのことで参りました。ご無礼をお許し下さい」
「おいおい…」
「まぁ上がって。母さん、聡太の彼女だってよ、ごめん、ズボン穿くから待ってよ」
頭を引っ込めた父へ「はーい」と返事をした薫はパンプスを脱いで小上がりへ立つ。
そして
「ほら、上がってよ」
と聡太を急かした。
そしてぐいぐいと聡太の腕を引き物理的に距離を縮めて、開放されたリビングへとストッキングの足を進めた。
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