ライアー・ブライド…真面目な僕らの偽装結婚

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
11 / 73
1

11

しおりを挟む

 それからしばらく。

「……、…、はい、ではおやすみなさい……望地くん、起きて」

ゆさゆさ揺さぶられて目を覚ましたら、対面に居た両親は寝室へと下がりダイニングには薫と聡太だけになっていた。


「うん?ん?なに、朝?」

「違う、そろそろ寝よ」

「…清水さん呑んでるよね、どうすんの」

「だから、望地くんの部屋に泊まるから…聞いてなかったの?」

「聞いてない…ふあぁ…寝てた…」


 時刻は夜中3時。

 両親と薫は聡太がダウンした後も酒盛りを続けていたらしい。

 薫は母からメイク落としとコットンを借りて脇に携え、「早く」と腕を引く。

「パジャマは何か貸してね」

「…あの、同じベッドで寝んの?」

「そりゃ、夫婦になるんだし」

「……色々言いたいことはあるんだけど…とりあえず今日は寝ようか…」


 2階の私室へ入り電気をぱちんと点ければ、8畳間にシングルベッドと座卓と本棚だけの殺風景な部屋が現れる。

 聡太は作り付けのクローゼットを開けて比較的新しいTシャツを探して、

「半袖でも良い?」

とそわそわし出した薫へと振り返った。

「あ、う、うん、何でも」

「ん…じゃあコレと…下は……ごめん、こんなんしか」

「ありがと…」

キャラクターもののパジャマの半ズボンと厚手のTシャツを重ねて渡せば、薫は受け取り僅かにはにかむ。

「着替えるなら出てた方が良い?」

「気にしないから良いよ」

「あ、そう。着替え終わったら教えて」

こんな時もドライなのな、聡太は自分のパジャマを支度して薫に背を向け着替え始めた。

「う、うん…」


 カサコソと衣擦れの音が静かな部屋に微かに響く。

 聡太の予想よりだいぶん早く「もう良いよ」と聞こえたので「振り向くよ」と一応断りを入れてから振り返る。

「…おぉ、大きかったね」

「うん…だって望地くん、身長高いじゃない」

「そっか……清水さん、結構小柄なんだね」

「…望地くんが大きいの…あんまり見ないで」

 180センチを超える聡太の服を160センチ無い薫が着ればそれは余裕だらけでぶかぶかで、半ズボンは膝下丈に変わっていた。


「(新感覚…なんか可愛いな)」

実家から出たことの無い聡太は恋人を自宅に泊めたりすることも経験が無い。

 なので自分の洋服を着た女性のこぢんまりとした可愛さにきゅんと軽率に心を撃たれる。

 そして大きな布地の中でバツが悪そうに眉を怒らせる薫、彼女の見た目の感情とは裏腹に「包んでやっている」なんて支配感が聡太を気持ち良くさせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【短編】愛することはないと、嫁ぎ先で塔に閉じ込められた。さあ。飛ぼう!

サバゴロ
恋愛
十年続いた戦争が終わり、和平の証として、両国の王子と王女が結婚することに。終戦の喜びもあり結婚式は盛大。しかし、王女の国の者が帰国すると、「あんたの国に夫は殺された」と召し使いは泣きながら王女に水をかけた。頼りの結婚相手である王子は、「そなたを愛することはない」と塔に閉じ込めてしまう。これは王女が幸せになるまでの恋物語。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

一夜の男

詩織
恋愛
ドラマとかの出来事かと思ってた。 まさか自分にもこんなことが起きるとは... そして相手の顔を見ることなく逃げたので、知ってる人かも全く知らない人かもわからない。

処理中です...