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しおりを挟むそれからしばらく。
「……、…、はい、ではおやすみなさい……望地くん、起きて」
ゆさゆさ揺さぶられて目を覚ましたら、対面に居た両親は寝室へと下がりダイニングには薫と聡太だけになっていた。
「うん?ん?なに、朝?」
「違う、そろそろ寝よ」
「…清水さん呑んでるよね、どうすんの」
「だから、望地くんの部屋に泊まるから…聞いてなかったの?」
「聞いてない…ふあぁ…寝てた…」
時刻は夜中3時。
両親と薫は聡太がダウンした後も酒盛りを続けていたらしい。
薫は母からメイク落としとコットンを借りて脇に携え、「早く」と腕を引く。
「パジャマは何か貸してね」
「…あの、同じベッドで寝んの?」
「そりゃ、夫婦になるんだし」
「……色々言いたいことはあるんだけど…とりあえず今日は寝ようか…」
2階の私室へ入り電気をぱちんと点ければ、8畳間にシングルベッドと座卓と本棚だけの殺風景な部屋が現れる。
聡太は作り付けのクローゼットを開けて比較的新しいTシャツを探して、
「半袖でも良い?」
とそわそわし出した薫へと振り返った。
「あ、う、うん、何でも」
「ん…じゃあコレと…下は……ごめん、こんなんしか」
「ありがと…」
キャラクターもののパジャマの半ズボンと厚手のTシャツを重ねて渡せば、薫は受け取り僅かにはにかむ。
「着替えるなら出てた方が良い?」
「気にしないから良いよ」
「あ、そう。着替え終わったら教えて」
こんな時もドライなのな、聡太は自分のパジャマを支度して薫に背を向け着替え始めた。
「う、うん…」
カサコソと衣擦れの音が静かな部屋に微かに響く。
聡太の予想よりだいぶん早く「もう良いよ」と聞こえたので「振り向くよ」と一応断りを入れてから振り返る。
「…おぉ、大きかったね」
「うん…だって望地くん、身長高いじゃない」
「そっか……清水さん、結構小柄なんだね」
「…望地くんが大きいの…あんまり見ないで」
180センチを超える聡太の服を160センチ無い薫が着ればそれは余裕だらけでぶかぶかで、半ズボンは膝下丈に変わっていた。
「(新感覚…なんか可愛いな)」
実家から出たことの無い聡太は恋人を自宅に泊めたりすることも経験が無い。
なので自分の洋服を着た女性のこぢんまりとした可愛さにきゅんと軽率に心を撃たれる。
そして大きな布地の中でバツが悪そうに眉を怒らせる薫、彼女の見た目の感情とは裏腹に「包んでやっている」なんて支配感が聡太を気持ち良くさせた。
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