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能事畢矣—のうじおわれり—

30(最終話)

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 悲しくても、辛くても、私は職務を忘れない。

 もはや体に染み付いた慣習…この夜は必要な所だけ出して繋がった。

「さと、み…あー…」

「重たく、ないでしょうか」

「平気だ、僕が乗るよりマシだろう」

 先生は、還暦を過ぎた辺りから順当に肥え出した。

 元が痩せ型だったので、ややポチャというくらいだが。


 腹は出るし、肌に張りが無くなる。

 加齢臭はもちろんで、体毛に白髪が混じる。

 突然この状態の先生を相手するなら、慣れるまで時間がかかったかもしれない。

 けれど長年連れ添って経過を見て来た私だから、何とも思わないし慈しみの心は増えているように感じる。


「ふふッ…もう私も、そう若くはありませんね」

「でも、この腰の…あー…グラインドがッ…あ、聖美、もう、」

「年々お早くなりますわね、大臣先生♡秘書にこんなに骨抜きにされている姿、職員の方に見せられませんわね」

「まったく、だ、あー……」


 先生を慕う気持ちは、刷り込まれた感性かもしれない。

 でも先生を愛する気持ちは私から生まれたものだ。

 情けない顔も愛おしい、みっともない体も愛おしい。


「先生、お慕い申しておりますわ」

 無事に約束の日を迎えるまで、そして迎えてからも…私は先生とこうして秘密の遊びを続けるのだ。



おわり
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