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衷心—ちゅうしん—
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しおりを挟む先生は私にシャワーを勧めて、こてんとベッドへ横になった。
私は仰せのままに風呂場で汗や精液を流し、これからのことを悶々と考える。
一から、それは恋愛なのだろうか。
それともセックスパートナーとしての新規分野の開拓のことなのだろうか。
教え込まれた感情と価値観から生み出されたこのモヤモヤとした気持ち。
やはり正面からぶつけねばなるまい。
「よし」
いざ尋常に勝負、と意気込んでベッドルームに戻ったものの、先生はグーグー寝息を立てていらした。
「……お疲れになったんですのね」
初老の男性に抱く感情として間違いかもしれないが、私はやはりこの人を「可愛い」と思った。
尊敬の念はもちろんだし労わりたいとか優しくしたいとかも思う。
けれど頑張りを讃えて褒めてあげたい、ともどんな気持ちだったのか教えて欲しい、とも思う。
私は先生に布団を掛けて、横に静かに寝転んだ。
そして寝顔を眺めて、よしよしと側頭部を撫でる。
「(不思議…これってやっぱり母性?)」
先生に悦んで頂くには、母子プレイを続けるのが良いのだろう。
しかし私の知る母像は空想上のもので、果たして先生に満足して頂けるだろうか。
母になる予定も無いし意志も無い、経験も無いし見知ったことも無い。
養母から受けた施しは実際の母親のそれとは明らかに異なるし、実母からは可哀想なことしかされていない。
ならば映画などを観て『理想の母親像』を知っていこうか。
振る舞いを学習して、また研鑽に励もうか。
「(勉強の日々ね…私って努力家ぁ…)」
うとうとしては目を覚まして、しかし私は数分後には寝落ちしていた。
電気は点けっ放し、服もまともに着ずにスキンケアも怠って寝てしまった。
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