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濫觴—らんしょう—
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しおりを挟む半年ほど経った秋のある日のこと。
会合にてすっかり疲れ果てた先生は、ホテルの部屋に入る前に
「激しめで頼むよ」
と耳打ちなさった。
どんなのが激しいのかしら、特殊な道具を持ち合わせていない私は少々戸惑う。
アナルを責める、固いもので叩く、人格を否定するような侮蔑の言葉を投げる…それらの理屈は習得済みではあるが実戦は初めてだった。
だって養母の家にいる時は、男性との関わりはほとんど無かったし。
扉を開いて慣れた絨毯の床を踏む、とりあえず先生はいつもの慣例だからとスーツをお脱ぎになった。
「……先生、両腕を…お出しになって」
シルクのネクタイをしゅるしゅる解けば、先生の瞳が一瞬ひゅうと絞られて白目が広くなる。
期待してらっしゃるなら応えねばね、お高い腕時計は外させて両手首をネクタイで縛っていく。
「ほぅ…」
「期待してらしたんですの?いやらしい先生」
「……」
「嫌がりもせず、可笑しいですわ」
「……」
果たしてこれでストレス発散になるのだろうか、なるからするのだがやはり理解はできない。
けれど仕事だから、縛った腕を万歳させてベッドへ先生を押し倒した。
「先生、どれくらい興奮してらっしゃるのか…見せて下さいね」
「あ、」
今宵初めて、私は先生の下着の中に介入した。
余裕のあるトランクスでは中がどうなっているか不明瞭だったけれど、腰のゴムを少しずらせばソレが露わになる。
「まぁ…お元気ですこと」
「み、見ないでくれ」
「どうして、こんなに…ご立派ですのに…ふふ」
「ほわぁ」
まさか童貞でもあるまいに、爪の先でちょんと触れば先生は若造みたいな声を吐いた。
50前でも子供を作る人はいるし、こんな遊びをするくらいだから当然ソコは現役なのだろう。
若い私にだって性欲はあるのだから、求められれば交わることだって吝かではない。
下着のままそこに跨ってすりすりと動けば、先生はレイプに怯える少女みたいに唇を震わせる。
「…先生?」
「やめ…そこは…すまない、やめてくれ」
「降りますわね」
「っ…すまない」
嫌よ嫌よの予定調和ではないのだな、半年程度の付き合いでも先生の本気は感じ取れた。
後で「あれはフリだよ」と怒られたって仕方ない、主従関係がハッキリしているのだからあのトーンで請われれば私は身を案じてやめてしまう。
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