上 下
9 / 30
濫觴—らんしょう—

9

しおりを挟む

 半年ほど経った秋のある日のこと。

 会合にてすっかり疲れ果てた先生は、ホテルの部屋に入る前に

「激しめで頼むよ」

と耳打ちなさった。

 どんなのが激しいのかしら、特殊な道具を持ち合わせていない私は少々戸惑う。

 アナルを責める、固いもので叩く、人格を否定するような侮蔑の言葉を投げる…それらの理屈は習得済みではあるが実戦は初めてだった。

 だって養母の家にいる時は、男性との関わりはほとんど無かったし。


 扉を開いて慣れた絨毯じゅうたんの床を踏む、とりあえず先生はいつもの慣例だからとスーツをお脱ぎになった。

「……先生、両腕を…お出しになって」

 シルクのネクタイをしゅるしゅるほどけば、先生の瞳が一瞬ひゅうと絞られて白目が広くなる。

 期待してらっしゃるなら応えねばね、お高い腕時計は外させて両手首をネクタイで縛っていく。

「ほぅ…」

「期待してらしたんですの?いやらしい先生」

「……」

「嫌がりもせず、可笑しいですわ」

「……」


 果たしてこれでストレス発散になるのだろうか、なるからするのだがやはり理解はできない。

 けれど仕事だから、縛った腕を万歳させてベッドへ先生を押し倒した。

「先生、どれくらい興奮してらっしゃるのか…見せて下さいね」

「あ、」

 今宵初めて、私は先生の下着の中に介入した。

 余裕のあるトランクスでは中がどうなっているか不明瞭だったけれど、腰のゴムを少しずらせばソレが露わになる。

「まぁ…お元気ですこと」

「み、見ないでくれ」

「どうして、こんなに…ご立派ですのに…ふふ」

「ほわぁ」

まさか童貞でもあるまいに、爪の先でちょんと触れば先生は若造みたいな声を吐いた。

 50前でも子供を作る人はいるし、こんな遊びをするくらいだから当然ソコは現役なのだろう。

 若い私にだって性欲はあるのだから、求められれば交わることだってやぶさかではない。


 下着のままそこに跨ってすりすりと動けば、先生はレイプに怯える少女みたいに唇を震わせる。

「…先生?」

「やめ…そこは…すまない、やめてくれ」

「降りますわね」

「っ…すまない」

 嫌よ嫌よの予定調和ではないのだな、半年程度の付き合いでも先生の本気は感じ取れた。

 後で「あれはフリだよ」と怒られたって仕方ない、主従関係がハッキリしているのだからあのトーンで請われれば私は身を案じてやめてしまう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

由紀と真一

廣瀬純一
大衆娯楽
夫婦の体が入れ替わる話

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...